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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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> 東野圭吾『容疑者Xの献身』 ~愛は論理を破綻させる~
e0038935_10382974.jpg満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

『容疑者Xの献身』

  東野圭吾・著
  文藝春秋、2005

顔も指紋も判読できない身元不明の他殺体。現場付近に落ちていた自転車に残された指紋から、被害者は富樫という男と判明する。富樫が殺される直前、離婚した元妻・靖子を探していたことから、警視庁の草薙は靖子に疑いの目を向ける。しかし、靖子には事件当夜のアリバイがあった。捜査が行き詰る中、靖子の隣人の高校教師・石神が大学の同窓生であることを草薙は知り、やはり大学の同窓生で親友の物理学者・湯川にその話をする。大学時代、同じ天才同士として最大のライバルであり理解者であった石神に会うため、湯川は石神の家へ向かう。この殺人事件に、石神が大きく関与していることなど知らずに・・・。


上のあらすじを読んで、「おいおい、いきなりネタバレしてんじゃねーよ!」とツッコまれた皆さん、たいへん失礼いたしました。でも、ご安心ください。このあらすじだけでは、なんのネタバレにもなっていませんので。直木賞受賞作にして、「このミステリーがすごい」第1位受賞作品。それも納得の、読み応えタップリのミステリー小説である。

僕はミステリー研究家ではないので、こういうパターンのミステリーを何と呼ぶのかは知らないが、わかりやすく言えば「古畑形式」であり「コロンボ形式」。そう、殺害シーン自体は、小説の冒頭でいきなり詳細に描かれるのだ。もちろん、犯人もその時点で判明する。

そこに、刑事が登場する。捜査は進み、容疑者は絞りこまれ、犯人に厳しい捜査の刃が向けられる。しかし、証拠がない。アリバイもない。捜査が難航する中、ひとりの男が現れる。それが、この小説の謎解き役である、物理学者の湯川だ。実は、この湯川が東野作品に登場するのはこれが3度目。「探偵ガリレオ」「予知夢」と続く、湯川シリーズの第3弾なのだ。

動機に関しては序盤で読者にわかるようになっており、このミステリーの最大の焦点は、靖子をサポートする石神が企てたトリックだ。あらゆる状況が、靖子の事件への関与を指し示しているのに、いっこうに捜査が進展しない。それを阻むのは、アリバイトリック。靖子のアリバイは、決して完璧なものではない。なのに、崩せない。なぜだ?

天才数学者・石神からの挑戦状に、天才物理学者・湯川が挑む。もちろん、警察もただそれを傍観しているわけではない。決して天才ではないが刑事としての優れた嗅覚をもつ草薙も、独自の視点で全容解明にチャレンジする。この3人の緊張感ある関係性がすごく面白い。湯川と石神が絡むシーンになると、「ヤバイよ石神さん、バレちゃうよーー」と、事件の犯人を知っているこちらとしてはハラハラしっぱなしだ。

しかし、謎解きは一向に進まない。真相を知っているはずの読者側にも、次第に違和感が出てくる。「なんかおかしいぞ、この事件?」同様に湯川も、事件の本質に気付きはじめる。「この事件の焦点は、アリバイトリックではない。アリバイに目を向けさせるのは、石神の作戦だ!」

ここから怒涛のクライマックスへと突入していく。その真相に関しては、もちろんここではネタバレしない。ただ、ひとつ言えるのは、「衝撃!」とか「驚愕!」とか、そういった類のものではないということだ。勘のいい人なら、薄っすら気付けた人もいたのではないだろうか。極めてシンプルだが、見事に警察と読者の盲点をついたトリックである。

そして、その真相を知ったとき浮かび上がってくる、石神の想い。あまり喋りすぎるとネタバレになってしまうので難しいのだが、そのときはじめてこの小説のタイトルの意味が理解できるようになる。

ただ、ここでひとつだけこの小説を欠点を挙げるとすれば、様々な人間からの愛情を一身に受ける靖子というキャラクターに、全く魅力が感じられないということがあると思う。弱くて、身勝手で、ある意味においては最も人間的な人物とも言えるこの靖子という女性。でも、それも作者の作戦のうちかな、という気もする。それによって余計に、物語のやるせなさ、切なさが増しているとも言えるからだ。

石神がたてた計画は、完璧だった。完璧なまでに、論理的なものだった。しかし、その論理は、「石神の愛情」と「湯川の友情」と「靖子の葛藤」によって、少しずつ破綻していく。どんな完璧な論理も、人間という不完全な生き物のハートの揺れによって、打ち砕かれてしまうのだ。それが、なんだか切なく、でも、不思議と心地よい。

あまりにも切ないラストシーンをどう読むか。全員にとって悲しい結末を迎えたことは間違いない。でも僕は、「これでよかったんじゃないか」って、そんな風に思った。
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by inotti-department | 2006-07-21 11:23 | book
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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