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> 天童荒太『包帯クラブ』 ~なぜだろう、心が動かない。~
e0038935_23362257.jpg満足度 ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)

『包帯クラブ』

天童荒太・著
2006、ちくまプリマー新書

高校生のワラは、病院の屋上でディノという青年と出会う。奔放な言動を繰り返すディノにワラは不快感を覚えるが、見えない傷に対して白い包帯を巻くことでその傷を癒すという彼のアイデアに共感し、彼と別れる。ワラは、親友のタンシオらとともに、「包帯クラブ」を発足させる。その活動内容は、心に傷を抱えた人のもとを訪れ、その人が傷を負った場所に包帯を巻くことで、その人の傷を癒すことだ。ワラは、アイデアの発案者であるディノも仲間に加えようとするが・・・。


名作『永遠の仔』の著者による最新小説。
僕は『永遠の仔』にも、そして『家族狩り』にも、かなり心揺さぶられた人間なので、この人が書く新作をとても楽しみにしていた。

その世界観は、いつもながらの天童ワールド。弱者にそっと寄り添い、他人には何もしてあげられないことを百も承知で、それでもただその傷を傷として認めてあげるだけで、少しでもその傷を癒せると信じて、人と繋がろうとする。天童作品の登場人物たちは、いつも弱くて、無力で、でもとても優しくて、そして、とても力強い。

時に「宗教的」だとか「偽善的」だとか揶揄される天童作品のメッセージだが、僕は基本的に彼のその真摯なメッセージに共感する。世界中には、傷を抱えた人間が星の数ほどいる。僕たちは、彼らに対して何もしてあげられないけれど、ただ彼らの存在を認識し、感じようとするだけでも、その傷を癒すパワーを持つことがきっとできる。「自分は傷ついている」ということを周囲の人に知ってもらえるだけで、どれほど僕たちが救われるか。自分の無力さを認めながらも、それでも世界に対して優しく寄り添おうとする作者の想いは、誰にも批判できるものではないと思うのだ。

でも、なぜだろう。この『包帯クラブ』を読んでいても、僕は正直、あまり心揺さぶられなかった。メッセージには共感する。読後感も悪くない。でも、『永遠の仔』や『家族狩り』のときのような心がゾクゾクと震えるような感動は、この小説からは得ることができなかった。

物語があまりにも寓話的すぎるのだと思う。ひとりひとりの登場人物から当たり前のように語られるそれぞれの傷。その見えない傷に包帯を巻くという彼らの行為。その行為が次々に効果を発揮していく現象。小説の中で描かれる全てが、ハッキリ言ってしまえばリアルじゃないのだ。

そんなこと言ったら、『永遠の仔』や『家族狩り』だって少しもリアルじゃなかったじゃないか?とおっしゃる方がいるかもしれない。その通り。前2作だって、完璧なフィクション。でも、そこには、物語の圧倒的な面白さがあった。重さがあった。前2作が、物語がメッセージを引っ張ってきた作品だとしたら、この『包帯クラブ』は、メッセージのために物語が後からくっついてきたような感じなのだ。少し厳しい言い方をしてしまえば、「物語に生命が感じられない」といってもいいかもしれない。

この『包帯クラブ』は、作者の力の入れ方で言ったら、6割・7割ぐらいだと思う。おそらく、小説を書いたというよりは、彼がいま最も強く感じていることを文章としてストレートに表現した、といった感覚だろう。そういう意味では、「見えない傷に包帯を巻く」というアイデアのみで小説を書ききる作者の才能には、改めて驚かされる。

天童荒太という人にとっては、この次に発表される長編が、おそらく分岐点になるのではないだろうか。再び『永遠の仔』のように、圧倒的なストーリーテリングのパワーを通してメッセージを伝えることができるのか。それとも、メッセージを伝えることが前面に出てしまい、ストーリーは二の次というような小説を書いてしまうのか。

この人にしか書き得ない、圧倒的な感動作を書いてほしいなぁ。
と、個人的には願ってます。
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by inotti-department | 2006-08-08 00:12 | book
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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