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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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> 『ミリオンダラー・ベイビー』 ~絶望。悲しみ。でも、小さな希望。~
満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

アカデミー賞を受賞する映画が、常に素晴らしい作品ばかりとは限らない。

期待して観た結果、「え、どうしてこれが取れたの?」とか、「よくわからん地味な映画だなーー。でも、賞を取ってるってことは、すごい映画なのかな」なんて感想を抱いた経験のある人も多いと思う。

そんなことは百も承知で、私はアカデミー作品賞を受賞した作品は、必ず観るようにしている。
別に、アカデミー賞を信頼しているわけではない。ただ、賞を取るということは、多くの人の支持や関心を集めた作品ということだから、そこには必ず何か感ずるところがあるはずなのだ、という思いが私にはある。まぁ、単なるミーハーなのかもしれないが(笑)

そんなわけで、本年のアカデミー賞で作品賞ほか主要4部門を制覇した『ミリオンダラー・ベイビー』を紹介したい。もうすでに劇場公開は終了しているし、観たのはけっこう前なのだけれど。

まずは、簡単なあらすじ。
ボクシングジムを経営するトレーナー・フランキーの前に、女ボクサーのマギーが現れる。ボクシングを教えてくれと懇願するマギーに対し、フランキーは「女は教えない」と突っぱねる。しかし、彼女の熱意に押され、ついにマギーを教えることに。マギーは瞬く間に成長し、ついにはタイトルマッチに挑戦することになるのだが・・・。

と、こうやってツラツラ書いてみると、ただのスポ根のような感じを受けるかもしれない。でも、それは大間違い。というか、このあらすじは、ただの序章に過ぎない。この「・・・」からの展開がすごいのだ!

<以下の感想、ネタバレ含みます。未見の方は、くれぐれもご注意ください。>

暗い映画だという噂は聞いていたものの、まさかこんな展開が待っていようとは。ラスト30分は、目を背けたくなるような絶望的な方向へと物語は突き進む。

試合での負傷により、動けない体になってしまうマギー。もちろん、ボクシングはもう二度と出来ない。さらに、実の母親からは、財産の所有権を譲る権利書へのサインを迫られる。状態はさらに悪化し、片足切断。ついには、舌を噛み切り自殺未遂。よくもまぁ、これだけの絶望的展開を考えつくものだ、と思わず関心すらしそうになる。

マギーはフランキーに懇願する。「私を殺して。悔いはない」と。苦悩するフランキー。さて、フランキーの決断やいかに・・・。(って、いまさらラストを伏せても仕方ないか。)

暗い。確かに暗い。でも、これをただの「救いのない映画」と片付けるのは、少し違うと私は思う。彼の決断への賛否は置いておくとして、少なくとも、フランキーとマギーは互いを理解しあうことができたのだ。家庭的な問題を背負い続けた2人の暗い人生に、小さくも確かな光を与えたのは、お互いの存在だったのではないだろうか。弱さを抱えた人間たちが、肩を寄せ合い生きていく様子を見つめるイーストウッド監督の視線は、シビアだが、温かい。

ずっと連勝街道を突っ走ることができたら、人生どんなに楽だろう。でも、人生はそんなに甘くない。どんな人間だって、1度は負ける。一寸先は闇かもしれない。だったら、いまをどうやって生きる?せめて、いつかやって来る敗北の前に、自分の道に目一杯の光を与えてやればいい。あとのことは、神のみぞ知る、だ。イーストウッドのメッセージは、恐ろしいほど冷徹で、でも、恐ろしいほど真実を示唆している。

そうはいっても、マギーとフランキーが最後に選んだ道は、あまりにも辛すぎるものだ。「敗北したら撤退しろ。勝利の日々を胸に抱きながら。悔いさえなければ、それでよし。」確かに、それもひとつの道なのかもしれない。でも、でも・・・。

しかし、そんな鬱々とした私の心に、イーストウッドは最後に優しい光を差してくれた。ジムでイジメにあって以来行方不明になっていたひとりのダメボクサーが、ラストシーンで、フランキーの消えたジムに再び姿を現す。「誰だって1度は負けるんだ」だったら、もう1度ゼロから始めればいい。絶望と悲しみの物語に最後に訪れる、小さな小さな希望。

生き方は人それぞれ。だったら、私はダメボクサーのような生き方をしてみたいな、と思った。

アカデミー賞を受賞する映画が、常に素晴らしい作品ばかりとは限らない。
しかし、多くの人から支持される作品には、やはり何らかの力を持っているものが多いのも事実だ。
by inotti-department | 2005-08-07 02:46 | cinema
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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