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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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> 法月綸太郎『生首に聞いてみろ』 ~”このミス!”制覇はダテじゃない~
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』 ~”このミス!”制覇はダテじゃない~_e0038935_15222253.jpg
満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

法月綸太郎・著
『生首に聞いてみろ』
2004、角川書店


「このミステリーがすごい!」という本を知っているだろうか?

簡単に説明すると、その年1年間に出版されたミステリー小説のランキングを発表する本である。
宮部みゆきや横山秀夫など、人気ミステリー作家の新作から、新進気鋭の若手作家の傑作ミステリーまで、幅広い作品がランキングに名を連ねる。かなりしっかりと集計を取っているので、このランキングに対する書店・読者の信頼度は年々高くなってきている。
本屋さんで、「このミス」のトップ10にランクインした作品を集めてコーナー展開しているのを目にしたことがある人も多いのではないだろうか?

さてさて、その「このミス」2005年版の栄えある第1位に輝いたのが、法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』である。

実を言うと、この作家、名前は辛うじて聞いたことはあったが、実際に本を手に取ったのははじめて。にもかかわらず、読んでみようと思ったのは、要するに「このミス」1位だったから。やれやれ、なんたるミーハー(笑)

でも、「このミス」の上位に食い込んでくる作品って、いざ読んでみると、やはりそれぞれ読み応えがあって面白い。だから、とりあえず1位の作品は読んどけ!みたいなところが、私の中にはあるのだ。

さて、簡単なあらすじ。
作家で探偵の法月綸太郎は、知り合いの翻訳家・川島敦志からある調査を依頼される。その内容は、「先日病気で死んだ敦志の兄・伊作が生前に制作した彫刻像の首が何者かによって切られてしまった。この像は、伊作の娘・江知佳をモデルにした”人体直取り彫刻”であり、首を切られたのは江知佳に対する殺人予告である可能性があるので、調査してくれ」というものだった。敦志は、犯人は江知佳のストーカー・堂本ではないかと疑う。一方、綸太郎は、事件のカギは16年前にあると睨む。伊作と妻・律子の離婚。その原因となったとみられる、律子の妹・結子と伊作の不倫。伊作の子を妊娠し、自殺した結子。その半年後の、結子の夫・各務と律子の電撃再婚。次第に見えてくる事件の裏側。そんな中、行方不明になっていた江知佳の生首が発見される。さて、犯人はいったい誰?そして、16年前、伊作ら4人に何があったのか?

と、前半のあらすじを書いてはみたものの、残念ながらこの小説が面白くなるのはこのあと。本当なら、その後の展開をもう少し細かく紹介したいのだが、なにぶん物語の展開がものすごく緻密で入り組んでいるので、長くなってしまうのでここでは割愛する。(なお、詳しいストーリーは”ネタバレstory紹介”内に掲載しているので、知りたい方はそちらを参照してほしい。)

正直に言って、前半はもうひとつ話に乗っていけなかった。人体直取り彫刻や、川島一家の複雑な人間関係の説明が続き、なかなか事件の本筋が見えてこない。というより、事件そのものが、彫刻の生首が取れていたということだけなので、話の焦点が見えてこないのだ。

しかし、江知佳の生首が発見されるあたりから、話が俄然面白くなってくる。そして、真相が明らかになったとき、一見退屈に思われた前半が、実は全て伏線だったことに気付かされる。石膏像の作り方、敦志と伊作の絶縁、江知佳の謎の行動、などなど。

とにかく、ストーリーの進め方が、本当に巧い。全てを計算し尽くしたうえで、書いているのだと思う。ゴールをしっかりと見定めながら、いろいろなエピソードを小出しにしていく。

綸太郎が堂本の隣人だと思っていた人が、実は変装した堂本だったという部分もそのひとつ。そして、彼の手には大きなトートバッグ。中身は江知佳の生首だったのか!?と思わせておいて、実は石膏像の生首。
また、各務家訪問の場面もそうだ。各務の母親を名乗る女性の正体は、実は律子。しかしその律子の正体も、結局は律子になりすました結子だったのだ。

登場人物ひとりひとりの謎の行動も、最後には全て説明されるから、読み終えたあとに気持ち悪さがひとつも残らない。最後の「義弟」のエピソードなども、出来すぎだとは思うけれど、物語の締めくくりとしては見事だと思う。決して派手さはないけれど、全てを読み終えて振り返ってみると、その見事なまでに緻密な構成には、ただただ舌を巻くほかない。

2005年版「このミステリーがすごい!」第1位獲得。それも納得の、堂々たる本格ミステリーの傑作だ。

ミステリーらしいミステリーが読みたいなーと思っている方に、ぜひオススメ。
パズルがはまっていくような精巧なミステリーが読みたいなーと思っているかたには、さらにオススメ。
by inotti-department | 2005-08-19 01:14 | book
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
by inotti-department
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