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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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> 雫井脩介『犯人に告ぐ』 ~抜群の面白さ!でも、詰めが甘いなぁ。~
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満足度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)

雫井脩介
『犯人に告ぐ』
2004、双葉社


小説は、まず作家で選ぶ。
これが、本選びの僕の鉄則だ。

映画の場合、周りの友人の口コミとかテレビの新作紹介なんかで、ふと「観てみよう!」って思ったりする。でも小説の場合、そういう情報はほとんど入らない。

かといって、書評を読むのは好きじゃない。話がわかっちゃう危険があるから。って、ブログでさんざんネタバレしてる僕が言うのも何だけど(笑)

そんなわけで、まず作家で選ぶ。信頼できる人の本なら、まず間違いはないだろうから。
でも、それだと問題が生じる。そう、いつまでたってもレパートリーが広がらないのだ。

だから、ときどきタイトルで選ぶ。これは、かなり危険な賭けだから、外れる場合も多いのだけれど。他に基準がないのだから、仕方あるまい。

さて、『犯人に告ぐ』。これも、タイトル買い。なんだか、面白そうなタイトルだ。表紙の豪快な明朝体も、パワフルで良い。

しかし、この作者の本はまだ読んだことがない。大丈夫か?
不安を感じつつも、ページをめくりはじめた。

簡単なあらすじ。
相模原で起こった男児誘拐事件。神奈川県警の巻島警視は捜査の現場指揮をとるが、犯人との接触に失敗し、男児は死体で発見される。その後の記者会見で巻島はメディアの総攻撃にあい、理性を失って暴言を連発。責任をとらされ、左遷される。それから6年。川崎で連続男児殺人事件が起こる。巻島は、かつての上司・曾根から呼び出され、事件の捜査指揮を依頼される。巻島は、曾根の捜査方針に興味を抱く。それは、テレビのニュース番組に出演して公開捜査を行い、犯人”バッドマン”を誘い出そうという「劇場型捜査」という手法だった。巻島は自らテレビに出演し、”バッドマン”との接触を図るが・・・。

<以下、ネタバレ含みます。未読の方は、ご注意ください>

最初の20ページぐらいで、グイグイ引きこまれた。パワフルで、エネルギッシュなストーリー展開。スピード感も最高だ。てっきり、この相模原誘拐事件の捜査の過程でテレビに出るんだと思ったら、大間違い。この事件は1章で終わって、舞台は6年後へ。

要するに、最初の事件はプロローグみたいなものなのだが、このプロローグがとても面白い。最後まで読み終えて振り返ってみても、一番面白いのはこの1章だと思う。

特に素晴らしいのが、記者会見のリアルな描写。自分の真意を伝えられない巻島のもどかしさ。他人の弱みにずけずけ踏み込んでくる、メディアの暴力的な言葉攻め。そして、巻島はポロっと、取り返しのきかない失言を吐いてしまう。

メディアのもつ暴力性と、警察という組織の本音。そして、それに翻弄される悲しき被害者たち。この小説のメインテーマの全てが、1章には詰まっている。

そして、2章から物語は本筋へ。巻島は、犯人にボロを出させるために、テレビからしきりに犯人を挑発する。かつて自分が嫌というほど思い知ったメディアの力を、今度は逆に利用するのだ。

しかし、この手法には批判の声があがる。巻島は、犯人とのやりとりを続けるために、犯人への共感めいた発言を繰り返す。湧き上がる疑問の声。さらに持ち上がる、巻島の証拠捏造疑惑。巻島バッシングに活路を見出そうとするライバル局も巻き込んで、捜査は混沌としはじめる。

メディアを巻き込んだ捜査の過程が、とにかくスリリングで面白い。しかし、その面白さはさておき、捜査の手法として、この「劇場型捜査」がどこまで有効なのかは、正直言って疑問だ。実際、バッドマンからの手紙が途中で届かなくなると、警察は捜査の手がかりを失ってしまう。「おいおい、警察、大丈夫か~!?」思わず、そんなヤジのひとつも飛ばしたくなる。

巻島の上司・植草がまたヒドイ。学生時代のフラれた恋人・未央子に再接近するために、現在ライバル局の看板アナウンサーになっている彼女に、捜査情報を流してしまうのだ。おいおい、警察、大丈夫か~!?

最初は、この植草の行動が、逆に公開捜査を盛り上げる効果を発揮したりもするのだが、行動はどんどんエスカレートしていく。そして、ついには、捜査の足を完全に引っ張りはじめる。植草のリークに気が付いた巻島は、架空の犯人逮捕をでっちあげて、植草を罠にはめる。この場面は、最大のカタルシス。植草のアホな行動にイライラされっぱなしだった読者は、ここでやっとスッキリできる。さぁ、あとは犯人を捕まえるだけ。

事件解決の決め手となるのは、犯人が落とした1通の手紙。犯人からの連絡が急にパッタリ途絶えてしまったのは、これが理由だったのだ。犯人の小心者っぷりを直感した巻島は、最後の賭けに出る。手紙の発見場所付近に犯人の居住地を絞って、片っ端から指紋を採取していくことをテレビで宣言する。そして、あっけないほど簡単に、犯人は逮捕される。

あれ、これだけ煽っておいて、意外に逮捕はあっさりなのね・・・。そして、動機の説明も特になし。そう、この小説は、犯人は誰かというところにミステリー性は全くないのだ。そのプロセスの面白さが、この物語の全て。でも、わかってはいても、正直、尻すぼみという感は否めない。だいたい、犯人が手紙を落としたという偶然を劇場型捜査の成果に結びつけるのは、ちょっと強引すぎやしないか?

他にも、最後の最後で詰めの甘さが目立つのが、この小説の惜しいところ。凋落した植草と未央子の絡みが、最後に描かれないのはなぜだ。最初に登場した未央子には、植草のような小物など太刀打ちできないような独特のオーラがあったのに、後半の彼女にそれは皆無。ただの俗人になりさがってしまっている。

僕はてっきり、未央子は植草に操られているように見えて、実は植草を利用していたのだという悪女っぷりが最後に描かれ、植草がどん底まで転落するというラストを想像していたのだが。結局、未央子という女の正体がよくわからなかった。彼女のような強い人間でさえも俗人にしてしまうのがメディア、とでも言いたかったのだろうか。

未央子の他にも、元伝説の刑事・迫田、カリスマキャスター・韮沢、未央子のライバルアナ・早津など、うまく使えばどうにでも話を広げられそうなキャラクターがいながら、どうも活かしきれていない。迫田など、後半はすっかり影が薄くなってしまった。その消費性こそメディア、って、しつこいか(笑)。

最後の最後に、1章の事件被害者の父親・夕起也が登場し、巻島を責め立てる。バッドマン逮捕は、このエピソードの前にかすんでしまう。この展開、悪くはないのだけれど、やはり個人的には、バッドマンと巻島の対決の方をハイライトに持ってくる盛り上がりが欲しかった。

でも、娯楽性という点に目をつぶれば、このエピソードをしっかり描いたことで、物語のテーマはより深まったのも確かだと思う。夕起也に刺され、彼の妻・麻美から謝罪された巻島は、嗚咽を漏らしながら麻美に謝罪する。それは、6年前の彼にはなかった、誠実で正直な態度だった。

警察は、果たしてどれだけ被害者の身になって行動しているだろうか?事件を解決することに、本腰を入れすぎていやしないだろうか?6年前の巻島が、まさにそうだった。彼は、犯人逮捕しか考えていなかった。その結果、被害者家族の信頼を失い、捜査は失敗に終わった。

しかし、今度の巻島は違った。公開捜査が始まる前に、まず被害者家族のもとへ向かった。そして理解を得たうえで、捜査を行った。その捜査も、常に事件を解決するためという点を忘れずに展開した。そこが、ただ事件を面白がっていた植草との、決定的な違いだった。だから、捜査の過程で巻島バッシングが広がっても、被害者家族たちはそれを煽ったりはしなかった。そして、捜査は成功をおさめたのだ。小説は、最後に被害者家族のひとりが巻島に礼を伝える場面を描き、幕を閉じる。

事件は、決して警察のものではない。あくまでも、被害者のものなのだ。

作者の問題提起の矛先は、メディアへも向かう。
メディアは、ただ物事を表層的にしか捉えようとしない。そして、表面上の発言や出来事に翻弄され、右往左往するのだ。巻島の記者会見もそうだ。確かに巻島にも非はあったが、果たして誰が彼の発言の裏にある悔いや悲しみに気付いていただろう。それを知る読者には、メディアの凶暴性だけが際立って見える。
バッドマン事件も同じだ。ライバル局は別として、共演者である韮沢や早津でさえも、巻島の真意に気付けず、次第に距離を置くようになる。

凶悪事件に対する、メディアの過剰で軽率な反応。しかし、それを引き出しているのは、結局のところ、僕たち情報の受け手側なのだろう。受け手は、常に刺激的な話題を欲している。

こういう刺激的な小説が書かれたことが、その何よりの証拠かもしれない。
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by inotti-department | 2005-08-30 18:07 | book
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
by inotti-department
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