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> 村上春樹『風の歌を聴け』 ~作家宣言!伝説の幕開け。~
e0038935_1565776.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)

村上春樹・著
『風の歌を聴け』
1979、講談社文庫


「好きな作家は誰ですか?」と聞かれると、バカのひとつ覚えみたいに「村上春樹」と答えていた時期があった。

ここ数年、意識的にいろいろな作家の本を読むようになってからは、「伊坂幸太郎」や「東野圭吾」など、同じ問いに対して答えを変えてみるケースも出てきた。自分の嗜好も、多少は幅広くなってきたものだなぁと思う。

でも、村上春樹に対する思いは、今もまったく色褪せたわけではない。
彼の長編は全て読んだけれど、ハッキリ言って全て面白かった。
今でも間違いなく、最も好きな作家のひとりである。

さて、ブログ開設を機に、新たに読んだ本の感想を日々タラタラと書いているわけだが、先日、突然ふと気付いた。
新たに読んだ本の感想を書く・・・。
「じゃあ、昔読んだ本の感想は、いつ書けば良いのだ!?」

というわけで、村上春樹作品を読み直すことを決意した。
そして、改めて1作ずつ、感想を記していこうと思う。

ただ、その前に、ひとつだけ断っておきたいことがある。
僕は村上春樹ファンではあるが、決して熱心な村上春樹マニアではない。

彼が熱心なヤクルトファンであることぐらいならなんとか知っているが、彼の生い立ちも知らないし、全発行作品を網羅したわけでもない。
世に言う”ハルキスト”ではない僕の感想である。ひょっとすると、熱心なフリークの方々には、読んでいてイライラするケースも出てくるかもしれない。

でも、僕は僕なりに彼の作品と向き合っていきたいと思っているので、無知を承知で自由に書こうと思う。彼の作品には、自由な解釈の余地が残されているものが多い。だから、僕も、自由に解釈して書く。

それでは、まず紹介するのは、伝説のデビュー作、『風の歌を聴け』である。

簡単なストーリー。
夏休み、生まれ育った街に帰省した大学生の僕は、友人の”鼠”と酒を飲みながら、毎日とりとめのない話をして過ごしていた。そんなある日、行きつけのバーのトイレで、倒れていた女性を介抱する。彼女と親しくなった僕は、デートらしきものをしつつ、互いの距離を縮めていく。しかし、彼女は突然旅行に発ち、そして”鼠”もまた、何か大きな悩みを抱えて口を閉ざす。僕の夏休みの終わりは、すぐそこまで迫っていた・・・。

<以下の感想、ネタバレ含みます。未読の方は、ご注意ください。>

何かが起きそうで、結局、何も起きないまま終わる物語。
何か重大なメッセージが隠されていそうで、結局、何も隠されていないのかもしれない、そんなつかみどころのない小説。

この小説を読み解くのは、本当に困難な作業だと思う。だから、自分なりに100%読み解くことができた人にとっては、「この作品が村上作品の中でも最高傑作だ!」ということになってもおかしくはないと思う。それが、作家の想いと100%一致しているのかどうかは、別として。

僕の感想を言えば、この作品にとびっきりの高得点を付けるわけにはいかない。そんなことをしたら、これ以後の彼の作品には、全て100点満点をつけなければならなくなるからだ。

『風の歌を聴け』を書いた時点の村上春樹は、まだプロの小説家とは言えないと思う。彼は、アマチュア的な気持ちで、アマチュア的な異色作を書ききった。しかし、そこにはまだ、第3作『羊をめぐる冒険』以後の彼の作品に見られるような、ストーリーテリングの魅力が欠如している。

ただ、この作品が、30年近くもの間、トップの小説家としてこの国に君臨している男のデビュー作だということを考えると、やはり何とも言えない感慨深さが沸きあがってくるのは確かだ。
そして、思う。
これは、彼の「作家宣言」だったのだな、と。

冒頭の独白が、とても感動的だ。
様々な人間や出来事が自分の前を過ぎ去り、そして、深い孤独を感じている”僕”。その”僕”が、こう言う。
「今、僕は語ろうと思う。」

語られるテーマは、「喪失の哀しみと孤独。そして、そこからの再生」。

物語の中で、主人公がかつて付き合った3人の女性の話が語られる。彼は、彼女たちを愛していた。しかし、失って時間が過ぎ去ったいま、彼は彼女たちの顔を誰ひとり思い出すことができない。

また、短い夏、一瞬だけ付き合った女性とも、別れが訪れる。冬に戻ると、もう彼女の姿はない。
そして数年たち、彼は結婚して、それなりに幸せな日々を送っている。
物語は、そこで終わる。

また、中盤に、こんなくだりがある。
「クールに生きたいと思い、自分の思っていることの半分しか口に出すまいと決心した。そして気が付いたら、思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていた」
「他人に伝える何かがあるかぎり、僕は確実に存在している。でも、誰も僕になど興味を持たない。そして、存在意義を見失い、やがてひとりぼっちになった」

”僕”は、極めてクールな精神の持ち主だ。その語り口もクールで、無理に他人の感情に踏み込もうともしない。そして、自分自身の感情にも。
しかし、彼は、人生を諦めているわけではない。彼は、多かれ少なかれ、孤独や哀しみを感じている。そして、なんとか、そこから抜け出す術を手にしたいと願っている。

その方法が、”語る”、つまり”書く”ということだったのだ。

この”僕”が、イコール”村上春樹”なのかどうか、それは実際にはさほど重要なことではない。大切なのは、”僕”の抱えている孤独の正体が、この小説を読んで何かを感じ取った読者が抱えているそれと、ほぼイコールである、ということなのだ。

そして、この構図は、21世紀に入っても、何も変わっていない。また、村上春樹が一貫して書き続けているテーマも。「喪失と再生」。『ノルウェイの森』も『海辺のカフカ』も、内包しているテーマは、この『風の歌を聴け』と何ひとつ変わらない。

「今、僕は語ろうと思う」
伝説は、この言葉から始まった。
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by inotti-department | 2005-09-03 02:53 | book
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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