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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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2005年 09月 10日 ( 1 )
伊坂幸太郎、石田衣良他『I LOVE YOU』 ~やっぱり伊坂!本多もスゴイ!~
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満足度 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)

伊坂幸太郎・石田衣良他
『I LOVE YOU』
2005、祥伝社


今回紹介するのは、男性作家6名による短編小説集。
テーマは、「恋愛」。
参加メンバーは、伊坂幸太郎、石田衣良、市川拓司、中田永一、中村航、本多孝好の6名。

こういう、いわゆる”アンソロジー”の醍醐味は、普段読まない作家との運命の出会いのチャンスがあること。僕は伊坂幸太郎目当てでこの本を手にとったが、石田衣良(テレビではかねがね)や市川拓司(『いま、会いにいきます』は映画で観て泣いたが、小説は未読)の作品は1度も読んだことがない。こんな機会でもなければ、なかなか読むこともなかったかもしれない。

しかし同時に、参加する作家にとって、”アンソロジー”は残酷なものでもある。
「最後の話はよかったけど、3番目のやつは最悪ー!」こんな風に、読者は、容赦なくバッタバッタと順位づけをしていくものだからだ。

さぁ、待っているのは、運命の出会いか、残酷な出会いか?
伊坂幸太郎を超える作品は、果たしてあるのか?
そんな期待を胸に、僕はページを捲りはじめた。


結論から言おう。以下、面白かった順に並べる。

第1位 伊坂幸太郎『透明ポーラーベア』
第2位 本多孝好『Sidewalk Talk』
第3位 中田永一『百瀬、こっちを向いて』
第4位 石田衣良『魔法のボタン』
第5位 中村航『突き抜けろ』
第6位 市川拓司『卒業写真』


こんな順位をつけると、「まったく、これだから、ファンっていうのは視野が狭くて困るよなー。自分の好きなもの以外、認めようとしないんだから」などと言われてしまうかもしれない(笑)
でも、僕だって、そういうのは好きじゃない(例えば、ダウンタウンの大ファンの人がナイナイの文句を言っているのを聞くと、うんざりする。イチローと松井。三谷幸喜とクドカン。中田と俊輔。パターンはいろいろ)。だから、出来ることなら、伊坂作品より面白いのがあるといいなぁ、と読む前は思っていたぐらいなのだ(言い訳じゃないですから、これは)。

でも、良いものは良い。「透明ポーラーベア」、これは本当に素晴らしい短編だと思う。たぶん、この本を手に取ったほとんどの人にとって、最も心に残る作品になったのではないだろうか。

この本で初めて伊坂作品を読んで、興味を持った人がもしいたら、デビュー作の『オーデュボンの祈り』(文庫化済み)から順番に読むことをオススメしたい。出来ることなら、順番に。理由は、順番に読んでいけば、自然にわかるかと思います。

伊坂幸太郎が恋愛小説?と、最初はその不似合いな組み合わせに驚いたのだけれど、読んでみたらなんてことはない、いつもの伊坂ワールド。彼の描きたかったテーマに、うまく恋愛がリンクしてきたという印象だ。

テーマは、「繋がり」。
優樹には、千穂という2年交際中の恋人がいた。が、優樹の転勤が決まり、2人は未来に不安を感じていた。そんなとき、デート先の動物園で、富樫さんと再会する。富樫さんは優樹の姉の元彼氏で、会うのは姉たちが別れて以来5年ぶり。優樹は、富樫さんと話しながら、姉のことを思い出す。姉は恋愛に対して奔放で、優樹が紹介されただけでも相手は10人を下らなかった。
富樫さんは、最後に紹介された人で、優樹が一番好きになった男だった。優樹は、富樫さんと姉が結婚することを望んだが、2人にもやはり別れは訪れた。そして、姉はその後シロクマ(透明ポーラーベア)に会いに北極へ向かい行方不明になり、富樫さんの隣にはいま新しい彼女がいる。優樹が千穂との今後の”繋がり”に不安を感じるのは、姉の別れを何度も見てきたから。ずっと繋がっていることなんて、本当に出来るのだろうか?そんな優樹に、その夜、奇跡のような出来事が訪れる・・・。

描かれる情景や言葉のひとつひとつが、心に残る。
そして、”繋がり”というキーワード。僕は、震えた。そして、読み終えたとき、この小説に出会えたことに、心から感謝した。

僕たちの人生には、多くの別れがつきまとう。それは避けられない。でも、別れ=”繋がり”の消滅では、決してないのだ。僕たちは、目に見えない糸できっと繋がっている。世界は、僕たちが考えているより、ずっとずっと小さいものかもしれないのだ。だから、クヨクヨしたり、不安になることなど、まったくない。

伊坂幸太郎のメッセージは、いつも優しく、前向きで、心地よい。

そして、”繋がり”といえば、最も伊坂幸太郎が得意とすること。この短編でも、ひとつひとつのエピソードが伏線となり、最後に奇跡的な”繋がり”をみせる。

特に圧巻なのが、「成田山の法則」。成田山への初詣。元旦に行く人もいれば、2日や3日に行く人もいる。もし全員が初日に行こうと決意したら、元旦の成田山はパニックになる。でも、決してそんなことにはならない。そういう不思議なバランス、それが「成田山の法則」。でも、何の制限もないのだから、ひょっとしたら、全員が元旦の成田山に集結することだってあるかもしれないじゃないか?

これが、最後の最後、重要な伏線となって物語に奇跡を起こす。こんなところにも、”繋がり”ということを考えずにはいられない。

さて、他の5篇については、長くなってしまうので簡単に書く(詳しいstoryは、「ネタバレstory紹介」をご参照ください)。
では、後味の悪いのは好きじゃないので、順位の低い順に。

第6位:市川拓司『卒業写真』
偶然再会した中学生の同級生を違う人と勘違いして、自分のかつて好きだった人の話をしてしまう。しかし、実は目の前にいるその男こそ、かつて自分が想いを寄せていた人だったのだ。
このアイデアは面白い。ただ、しばらく勘違いしつづける主人公に対して、読んでいるこっちは、すぐにそのトリックに気付いてしまう。だから、話が意外なほど転がらないし、盛り上がらない。しかも、その片想いの相手”渡辺くん”に、僕は少しも魅力を感じなかった。

第5位:中村航『突き抜けろ』
大野は、彼女と奇妙な交際をしていた。それは、週3回決まった曜日の決まった時間にのみ電話して、デートも決まって週1回だけするというもの。そんな大野が、親友の坂本、そして風変わりな青年・木戸さんと出会う。
3位から5位は、ほとんど差がない。正直、これが3位でも良いぐらい。すごく荒削りで欠点も多いのだが、妙に心に残る部分もあった。主人公の3人は、現状を打破する勇気がもてずにいる。大野は彼女に嫌われたくなくて控えめな交際をつづけ、坂本は片想いの相手に告白する勇気がもてず、木戸は酒とタバコを恋人に冴えない生活をつづける。でも、彼らは彼らなりの方法で、その現状から”突き抜けて”いく。ラスト、「彼女にいますぐ電話しなくちゃ!」と決意する大野の”突き抜け”がすこぶる爽快。もう少し無駄がなくなりコンパクトに表現するテクニックをつければ、この作家は大化けするかもしれない。

第4位:石田衣良『魔法のボタン』
彼女にフラレて傷心の隆介は、幼馴染の萌枝と飲み歩くことで立ち直っていく。今まで異性として意識したことのなかった萌枝を、隆介は次第に女として見始める。
ベタベタ。話自体はどうってことない。ただ、やっぱり文章がうまいので、物語の展開に無駄がない。たぶん、この作家の力量なら、この程度の短編ならば短時間で書けてしまうのだろう。さすがだなと思うのは、タイトル。この”魔法のボタン”ごっこの存在が、クライマックスを印象的なものにしている。

第3位:中田永一『百瀬、こっちを向いて』
高校時代。相原は、先輩で幼馴染の宮崎から奇妙な依頼を受けた。それは、ある女と交際している演技をしてほしい、というもの。宮崎には神林という彼女がいたが、彼はその”ある女”とも交際していて、それをカモフラージュするのが狙いだった。それが、相原と百瀬の出会いだった・・・。
いまでいう”アキバ系”的キャラクター、相原が良い。「自分みたいな人間に、恋愛なんて」と考えていた彼が、百瀬と出会い、”欲”をおぼえる。恋愛の”欲”を知ってしまった相原は、もう昔の彼には戻れない。それを不幸なことを捉える相原の背中を、親友の田辺がそっと押す。「僕は恋愛を知らない。だから、僕は君が羨ましい!」と。このシーンはとても感動的だ。百瀬との未来を予感させる爽やかなラストも含め、なんだか映画のように、ひとつひとつの光景が目に浮かぶような素敵な物語だ。ちなみに、著者は、ある人気作家の覆面ネームだそうだ。

第2位:本多孝好『Sidewalk Talk』
彼女との、最後の待ち合わせ。目的は、離婚届を受け取ること。5年間の夫婦生活。浮気でも借金でもないが、自然に訪れた別れのとき。僕は、彼女との出会いや交際の日々を思い出す。
6つの物語の中で唯一、”別れ”を描いた物語。でも、後味は、すこぶる良い。なんといっても、最後の4ページが見事のひとこと。別れ際、すれ違った彼女の香水の匂いに誘われるように、交際して間もないときのあるエピソードを思い出す。そのときに、彼女が言った言葉。それを思い出したとき、主人公は、今日彼女が本当に伝えたかった想いに気付く。奇跡のような偶然がきっかけで結ばれた2人に、もう1度奇跡は訪れるのか?”別れ”を描きながら、”未来”さえ予感させつつ、この素敵な短編は幕をおろす。


6つの話、どれもそれなりに面白い。どの作家も、それぞれが個性を発揮しているし、読んで損のないアンソロジーだと思う。
ただ残念なのが、本全体のタイトル。『I LOVE YOU』って(10年以上の歴史を刻んできたミスチルが最新アルバムに『I♥U』とつけるのとは、わけが違う)。

6人の作家たちの、一生懸命考えた素敵なタイトルたちを見てほしい。『透明ポーラーベア』『魔法のボタン』。作家たちは、それこそ命をかけて戦っているのだ。だったら、出版社だって、それこそ命をかけて、本を手にとってもらう努力をしなければならない。

ただ、この本は、奇跡のような偶然によって、救われた。それは、掲載の順番。
よく見るとただの「あいうえお順」なのだが、偶然にも、伊坂幸太郎ではじまり、本多孝好で終わっている。

最初と最後の物語が素晴らしいので、この短編集は、読みはじめのワクワク感と読み終わりの後味が、すごく胸に残るのだ。

いや、でも、これって本当に偶然なのか?
ひょっとしたら、最初から順番のことを考えて、キャスティングしてたりして。
ひょっとしたら、「伊坂幸太郎ではじめたいから、「あ」ではじまる作家には声をかけるな!」なんて指示が出てたりして。

真相はわからない。
でも、僕はやっぱり、奇跡のような偶然を、信じてみたい。

この短編集を読み終えたいま、そんな気持ちになっている。
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by inotti-department | 2005-09-10 17:14 | book
   
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
by inotti-department
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