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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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<   2005年 08月 ( 26 )   > この月の画像一覧
【2006年】観た映画の「満足度」一覧!
10点満点で、満足度のみ載せています。
劇場へ足を運ぶ際や、DVD鑑賞の際の参考にしてみてください。

10点: 最高!文句なしの傑作!
9 点: 素晴らしい!絶対オススメ!
8 点: 面白い!観て損なし!
7 点: 満足!僕は好きです!
6 点: まあまあ。悪くはないが、不満もあり。
5 点: うーむ。不満いっぱい。
4 点以下: ダメだこりゃ。駄作。

<2006年12月公開>
・『リトル・ミス・サンシャイン』 ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『硫黄島からの手紙』     ★★★★★★★★☆☆ (8点)
<2006年11月公開>
・『デスノート the Last name』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『手紙』             ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
<2006年10月公開>
・『父親たちの星条旗』     ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『ワールド・トレード・センター』 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『虹の女神 Rainbow Song』 ★★★★★★☆☆☆☆(6点)
<2006年9月公開>
・『フラガール』          ★★★★★★★★★☆ (9点)
・『9/10』             ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『カポーティ』          ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『シュガー&スパイス』    ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『イルマーレ』         ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『グエムル -漢江の怪物-』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
<2006年8月公開>
・『キンキーブーツ』      ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『スーパーマン・リターンズ』 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『マッチポイント』        ★★★★★★★★☆☆ (8点)
<2006年7月公開>
・『日本沈没』          ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『M:i:3』            ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ゲド戦記』           ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『ゆれる』            ★★★★★★★★★☆ (9点)
・『カーズ』            ★★★★★★★★☆☆ (8点)
<2006年6月公開>
・『デスノート 前編』      ★★★★★★★★☆☆ (8点)
<2006年5月公開>
・『雪に願うこと』         ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『陽気なギャングが地球を回す』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『嫌われ松子の一生』     ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『ダ・ヴィンチ・コード』     ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
<2006年4月公開>
・『V・フォー・ヴェンデッタ』  ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『レント』             ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『ブロークン・フラワーズ』  ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『プロデューサーズ』     ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
<2006年3月公開>
・『かもめ食堂』         ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『ナルニア国物語 第1章』 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『うつせみ』           ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』★★★★★★☆☆☆☆(6点)
・『ブロークバック・マウンテン』 ★★★★★★★★☆☆ (8点)
<2006年2月公開>
・『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『クラッシュ』          ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ミュンヘン』          ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
<2006年1月公開>
・『博士の愛した数式』     ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『僕のニューヨークライフ』  ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『オリバー・ツイスト』      ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『プライドと偏見』        ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『フライトプラン』        ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『THE有頂天ホテル』     ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)

<2005年公開作品>
・『歓びを歌にのせて』     ★★★★★★★★★☆ (9点)
・『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『キング・コング』        ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『運命じゃない人』       ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『疾走』              ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『ポビーとディンガン』     ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ある子供』           ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『SAYURI』           ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『Mr. & Mrs. スミス』     ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『カーテンコール』       ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『親切なクムジャさん』     ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『エリザベスタウン』      ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ALWAYS 三丁目の夕日』 ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『春の雪』            ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『イン・ハー・シューズ』    ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ティム・バートンのコープスブライド』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『TAKESHIS'』         ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『私の頭の中の消しゴム』   ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ミリオンズ』           ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『シン・シティ』          ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『四月の雪』            ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『タッチ』              ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『メゾン・ド・ヒミコ』        ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『NANA』             ★★★★★☆☆☆☆☆ (5点)
・『シンデレラマン』        ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『チャーリーとチョコレート工場』 ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『リンダ リンダ リンダ』     ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『ヒトラー ~最期の12日間~』 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『愛についてのキンゼイ・レポート』 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『SHINOBI』           ★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3点)
・『マラソン』            ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『容疑者 室井慎次』       ★★★★☆☆☆☆☆☆ (4点)
・『奥さまは魔女』         ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『バットマン・ビギンズ』     ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『ロボッツ』             ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『皇帝ペンギン』         ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『宇宙戦争』            ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『ライフ・イズ・ミラクル』      ★★★★★★★☆☆☆ (7点)
・『フライ・ダディ・フライ』      ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『電車男』             ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
・『ミリオンダラー・ベイビー』    ★★★★★★★★☆☆ (8点)
・『スターウォーズ・エピソード3』 ★★★★★★★★★☆ (9点)
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by inotti-department | 2005-08-30 18:15 | ”2006年観た映画”リスト
雫井脩介『犯人に告ぐ』 ~抜群の面白さ!でも、詰めが甘いなぁ。~
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満足度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)

雫井脩介
『犯人に告ぐ』
2004、双葉社


小説は、まず作家で選ぶ。
これが、本選びの僕の鉄則だ。

映画の場合、周りの友人の口コミとかテレビの新作紹介なんかで、ふと「観てみよう!」って思ったりする。でも小説の場合、そういう情報はほとんど入らない。

かといって、書評を読むのは好きじゃない。話がわかっちゃう危険があるから。って、ブログでさんざんネタバレしてる僕が言うのも何だけど(笑)

そんなわけで、まず作家で選ぶ。信頼できる人の本なら、まず間違いはないだろうから。
でも、それだと問題が生じる。そう、いつまでたってもレパートリーが広がらないのだ。

だから、ときどきタイトルで選ぶ。これは、かなり危険な賭けだから、外れる場合も多いのだけれど。他に基準がないのだから、仕方あるまい。

さて、『犯人に告ぐ』。これも、タイトル買い。なんだか、面白そうなタイトルだ。表紙の豪快な明朝体も、パワフルで良い。

しかし、この作者の本はまだ読んだことがない。大丈夫か?
不安を感じつつも、ページをめくりはじめた。

簡単なあらすじ。
相模原で起こった男児誘拐事件。神奈川県警の巻島警視は捜査の現場指揮をとるが、犯人との接触に失敗し、男児は死体で発見される。その後の記者会見で巻島はメディアの総攻撃にあい、理性を失って暴言を連発。責任をとらされ、左遷される。それから6年。川崎で連続男児殺人事件が起こる。巻島は、かつての上司・曾根から呼び出され、事件の捜査指揮を依頼される。巻島は、曾根の捜査方針に興味を抱く。それは、テレビのニュース番組に出演して公開捜査を行い、犯人”バッドマン”を誘い出そうという「劇場型捜査」という手法だった。巻島は自らテレビに出演し、”バッドマン”との接触を図るが・・・。

<以下、ネタバレ含みます。未読の方は、ご注意ください>

最初の20ページぐらいで、グイグイ引きこまれた。パワフルで、エネルギッシュなストーリー展開。スピード感も最高だ。てっきり、この相模原誘拐事件の捜査の過程でテレビに出るんだと思ったら、大間違い。この事件は1章で終わって、舞台は6年後へ。

要するに、最初の事件はプロローグみたいなものなのだが、このプロローグがとても面白い。最後まで読み終えて振り返ってみても、一番面白いのはこの1章だと思う。

特に素晴らしいのが、記者会見のリアルな描写。自分の真意を伝えられない巻島のもどかしさ。他人の弱みにずけずけ踏み込んでくる、メディアの暴力的な言葉攻め。そして、巻島はポロっと、取り返しのきかない失言を吐いてしまう。

メディアのもつ暴力性と、警察という組織の本音。そして、それに翻弄される悲しき被害者たち。この小説のメインテーマの全てが、1章には詰まっている。

そして、2章から物語は本筋へ。巻島は、犯人にボロを出させるために、テレビからしきりに犯人を挑発する。かつて自分が嫌というほど思い知ったメディアの力を、今度は逆に利用するのだ。

しかし、この手法には批判の声があがる。巻島は、犯人とのやりとりを続けるために、犯人への共感めいた発言を繰り返す。湧き上がる疑問の声。さらに持ち上がる、巻島の証拠捏造疑惑。巻島バッシングに活路を見出そうとするライバル局も巻き込んで、捜査は混沌としはじめる。

メディアを巻き込んだ捜査の過程が、とにかくスリリングで面白い。しかし、その面白さはさておき、捜査の手法として、この「劇場型捜査」がどこまで有効なのかは、正直言って疑問だ。実際、バッドマンからの手紙が途中で届かなくなると、警察は捜査の手がかりを失ってしまう。「おいおい、警察、大丈夫か~!?」思わず、そんなヤジのひとつも飛ばしたくなる。

巻島の上司・植草がまたヒドイ。学生時代のフラれた恋人・未央子に再接近するために、現在ライバル局の看板アナウンサーになっている彼女に、捜査情報を流してしまうのだ。おいおい、警察、大丈夫か~!?

最初は、この植草の行動が、逆に公開捜査を盛り上げる効果を発揮したりもするのだが、行動はどんどんエスカレートしていく。そして、ついには、捜査の足を完全に引っ張りはじめる。植草のリークに気が付いた巻島は、架空の犯人逮捕をでっちあげて、植草を罠にはめる。この場面は、最大のカタルシス。植草のアホな行動にイライラされっぱなしだった読者は、ここでやっとスッキリできる。さぁ、あとは犯人を捕まえるだけ。

事件解決の決め手となるのは、犯人が落とした1通の手紙。犯人からの連絡が急にパッタリ途絶えてしまったのは、これが理由だったのだ。犯人の小心者っぷりを直感した巻島は、最後の賭けに出る。手紙の発見場所付近に犯人の居住地を絞って、片っ端から指紋を採取していくことをテレビで宣言する。そして、あっけないほど簡単に、犯人は逮捕される。

あれ、これだけ煽っておいて、意外に逮捕はあっさりなのね・・・。そして、動機の説明も特になし。そう、この小説は、犯人は誰かというところにミステリー性は全くないのだ。そのプロセスの面白さが、この物語の全て。でも、わかってはいても、正直、尻すぼみという感は否めない。だいたい、犯人が手紙を落としたという偶然を劇場型捜査の成果に結びつけるのは、ちょっと強引すぎやしないか?

他にも、最後の最後で詰めの甘さが目立つのが、この小説の惜しいところ。凋落した植草と未央子の絡みが、最後に描かれないのはなぜだ。最初に登場した未央子には、植草のような小物など太刀打ちできないような独特のオーラがあったのに、後半の彼女にそれは皆無。ただの俗人になりさがってしまっている。

僕はてっきり、未央子は植草に操られているように見えて、実は植草を利用していたのだという悪女っぷりが最後に描かれ、植草がどん底まで転落するというラストを想像していたのだが。結局、未央子という女の正体がよくわからなかった。彼女のような強い人間でさえも俗人にしてしまうのがメディア、とでも言いたかったのだろうか。

未央子の他にも、元伝説の刑事・迫田、カリスマキャスター・韮沢、未央子のライバルアナ・早津など、うまく使えばどうにでも話を広げられそうなキャラクターがいながら、どうも活かしきれていない。迫田など、後半はすっかり影が薄くなってしまった。その消費性こそメディア、って、しつこいか(笑)。

最後の最後に、1章の事件被害者の父親・夕起也が登場し、巻島を責め立てる。バッドマン逮捕は、このエピソードの前にかすんでしまう。この展開、悪くはないのだけれど、やはり個人的には、バッドマンと巻島の対決の方をハイライトに持ってくる盛り上がりが欲しかった。

でも、娯楽性という点に目をつぶれば、このエピソードをしっかり描いたことで、物語のテーマはより深まったのも確かだと思う。夕起也に刺され、彼の妻・麻美から謝罪された巻島は、嗚咽を漏らしながら麻美に謝罪する。それは、6年前の彼にはなかった、誠実で正直な態度だった。

警察は、果たしてどれだけ被害者の身になって行動しているだろうか?事件を解決することに、本腰を入れすぎていやしないだろうか?6年前の巻島が、まさにそうだった。彼は、犯人逮捕しか考えていなかった。その結果、被害者家族の信頼を失い、捜査は失敗に終わった。

しかし、今度の巻島は違った。公開捜査が始まる前に、まず被害者家族のもとへ向かった。そして理解を得たうえで、捜査を行った。その捜査も、常に事件を解決するためという点を忘れずに展開した。そこが、ただ事件を面白がっていた植草との、決定的な違いだった。だから、捜査の過程で巻島バッシングが広がっても、被害者家族たちはそれを煽ったりはしなかった。そして、捜査は成功をおさめたのだ。小説は、最後に被害者家族のひとりが巻島に礼を伝える場面を描き、幕を閉じる。

事件は、決して警察のものではない。あくまでも、被害者のものなのだ。

作者の問題提起の矛先は、メディアへも向かう。
メディアは、ただ物事を表層的にしか捉えようとしない。そして、表面上の発言や出来事に翻弄され、右往左往するのだ。巻島の記者会見もそうだ。確かに巻島にも非はあったが、果たして誰が彼の発言の裏にある悔いや悲しみに気付いていただろう。それを知る読者には、メディアの凶暴性だけが際立って見える。
バッドマン事件も同じだ。ライバル局は別として、共演者である韮沢や早津でさえも、巻島の真意に気付けず、次第に距離を置くようになる。

凶悪事件に対する、メディアの過剰で軽率な反応。しかし、それを引き出しているのは、結局のところ、僕たち情報の受け手側なのだろう。受け手は、常に刺激的な話題を欲している。

こういう刺激的な小説が書かれたことが、その何よりの証拠かもしれない。
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by inotti-department | 2005-08-30 18:07 | book
『バットマン・ビギンズ』 ~シリーズの新たな1ページ~
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満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

『バットマン・ビギンズ』(2005、米)
   監督 クリストファー・ノーラン
   出演 クリスチャン・ベール  マイケル・ケイン 


シリーズものの途中で、キャストやスタッフが変わることはよくあること。
最近だと、『ハリー・ポッター』がそうだし、今年新作が公開された『マスク』なんかもそう。

そして、たいていの場合、新キャスト&スタッフに対するシリーズファンの風当たりは、恐ろしく強い。
まぁ、よく考えれば、それも当然なんだけれど。だって、そのシリーズのファンになるっていうことは、シリーズ第1作に魅了されてそうなったというパターンがほとんどなのだから。急にキャストとか世界観が変わったら、なにかとケチをつけたくなるのがファン心理というものだ。

だから、シリーズの途中から登板する人たちって、本当にかわいそう。「お手並み拝見」って感じで厳しく見られるうえに、結果を褒められることはほとんどない。

そしてまた、ひとりの若き映画監督が、そんな厳しい戦いに身を投じた。クリストファー・ノーラン。『メメント』で一躍脚光を浴びた、ハリウッドのニューウェーブの旗手ともいえる存在だ。

シリーズは、なんとあの『バットマン』。観たことはなくても、ほとんどの人がその名前ぐらいは知っているだろう、超有名シリーズだ。

『バットマン』といえば、なんといっても初期2作を撮った奇才ティム・バートンのイメージが強烈だ。さぁ、果たして若き天才は、ハリウッドNo.1の奇才を超えることができたのか?

さて、簡単なあらすじ。
幼いとき、目の前で両親を殺されたブルースは、心に闇を抱えたまま大人になる。闇の正体は、恐怖。恐怖に打ち勝つ強さを手に入れるため、ブルースはヒマラヤで修行をする。修行を終えたブルースは、故郷ゴッサム・シティへ戻る。そこは、悪と汚職がはびこる犯罪都市となっていた。ブルースは悪を掃討するため、バットマンとなり、夜のシティへ飛び出して行くが・・・。

『ビギンズ』というタイトル通り、この作品は、スターウォーズでいうところの「エピソード1」のような位置づけだ。いかにして、バットマンは誕生したのか?ブルース・ウェインが抱える心の闇とは?

両親が目の前で殺されたエピソードに関しては、バートンが作った第1作でもチラっとは触れられていた(実際には、第1作ではその犯人はジャック・ニコルソン演じる”ジョーカー”ということになっていたから、この『ビギンズ』とは別の話ということになるのだが)。しかし、ここまでバットマンの心の闇に迫ったのは、シリーズの中でもこの作品だけだ。

バートンが作った2本の作品は、明らかに娯楽路線。さらに、そこに監督独特のオタクパワーが注入されることで、見事なファンタジー世界が構築されていた。派手な映像、個性的な悪役たち、シンプルなストーリーと、とにかく楽しい映画になっている。実際、いま改めて見直しても存分に楽しめる、見事な娯楽大作だ。

しかし、ノーランは、バートンの土俵には上がらなかった。娯楽路線、コミカルなファンタジー路線では、バートンが作り上げた”バットマン・ワールド”を超えることはできない。だったら、自分にしか描けない”バットマン”を作ろう。そして、ノーランが出した答えが、バットマンの内面に鋭く迫ることだったのだ。

この選択は、大成功だったと思う。結果、『バットマン・ビギンズ』は、シリーズ中最も暗いが、シリーズ中最も壮大で、そしてシリーズ中最も見ごたえのある傑作となった。「楽しい映画」となるとバートン作品に軍配があがるが、「面白い映画」となると、僕はノーラン作品の方が一枚上手だと思う。

<以下の感想、ネタバレ含みます。未見の方、ご注意ください>

正直言って、最初の修行のくだりは長すぎる。ここで退屈してしまう人もいるかもしれない(日本人の場合、ケン・ワタナベが出てくる唯一のところだから、別の楽しみ方ができるのだが)。ただ、結局ここで悶々と描かれることが、この作品の根幹なのだ。恐怖の正体とは何か?その恐怖に打ち勝つにはどうすればよいのか?本当の正義とは何か?

この苦悶のときを乗り越えて、ブルースが出すひとつの結論。
自分は、悪を倒す。シティから、悪を全て一掃する。そしてそれは、自分の中に棲みついた恐怖を追い払うための戦いでもある。
こうして、バットマンが誕生するのだ。

そして見逃せないのが、物語の展開の巧みさ。豪華キャストを配してたくさんのキャラクターを登場させているが、そのそれぞれがとても効果的なのだ。ファルコーニが黒幕と見せかけて、裏にはラーズの存在が・・・という飽きさせないスリリングな展開も良い。

ラストも素晴らしい。バットマンの正体を知ったレイチェルが、ブルースに告げる言葉。
「あなたの本当の顔はバットマン。ブルースは去った。でも、きっといつか会える」
バットマンとしての終わりなき戦いをスタートしたブルースにとって、もはやブルースという人格こそが陰の存在になってしまうのだ。しかし、その宿命を、ブルースは静かに受け入れる。

さて、ノーラン監督はバートン路線と別の道を行くことで映画を成功させたと先ほど言ったが、実はこの『バットマン・ビギンズ』、第1作の『バットマン』を随所で上手く利用していることも見逃せない。

まずそもそも、ブルース=バットマンということは皆最初からわかっているわけで、それがあるからこそ最初の修行シーンをあれだけ長く描けるのだ。観客は、「この修行を経てバットマンになるわけだな」と、ドキドキしながら先の展開を期待することができるというわけだ。

バットマンが運転する車”バットモービル”もそう。ティム・バートンがとても魅力的にこの車を描いたために、”バットモービル”はバットマン・ファンにとっては特別なものになっている。それを逆手にとって、ノーランは、車の初登場シーンをやや大げさに描いている。そして、そのシーンには、やはりとても感慨深いものがあるのだ。

そして、ラストシーン。事件が解決し、ゴードン刑事はバットマンを呼び出す。「暴力は暴力を招き、仮面は仮面を呼ぶ。次の敵は、こいつだ」
指し示すトランプのカード。そこに写っているのは、「ジョーカー」。

この「ビギンズ」と旧シリーズは、繋がっているようで繋がっていない部分が多いのだが(設定以前に、そもそもみんな顔が違うしね)、最後は強引に「ジョーカー」で結びつけてしまう。ちなみに、「ジョーカー」とは、第1作でジャック・ニコルソンが怪演した悪役の名前である。ひょっとしたら、これは、”バットマン・シリーズ”をずっと観てきたファンに対する、監督なりのサービスだったのかもしれない。

どこまでも抜け目のない140分。
『バットマン・ビギンズ』のタイトルにふさわしい、シリーズの”エピソード1”にして、最高傑作の誕生だ。
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by inotti-department | 2005-08-26 01:55 | cinema
『ロボッツ』 ~大人も楽しめるけど、やっぱり子供のほうが・・・~
e0038935_15161558.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆(6点)

『ロボッツ』(2005、米)
   監督 クリス・ウェッジ
   声の出演 ユアン・マクレガー ハル・ベリー

アニメーション映画を褒める言葉の常套句「大人も楽しめる映画です!」

確かに、アニメだから観客は子供ばっかりかなぁとか思って劇場へ行くと、ほとんど大人だけだったりして驚かされる。少なくとも、ここ日本においては、アニメは子供だけのものではない。

実際、宮崎駿の近年の作品なんか、子供が見たらどう思うんだろうって、すごく気になる。話を深読みしようと思えばいくらでもできるような難解で意味深なストーリー。「ハウル」なんか、わかったような気にはなれるけれど、実際に監督の意図を100%理解できた大人が、果たして何人いるだろうか。ましてや子供にとっては、さらに意味プーだろうに。少なくとも宮崎監督が、子供のためだけに映画を作っているとは、とても思えない。

しかし、そうは言っても、僕はこう断言したい。
「やっぱり、アニメは子供のもの!」

『ロボット』を観て、僕のその思いは、ますます確信に近いものになった。

さて、簡単なあらすじ。
貧乏な皿洗いロボットの家に生まれたロドニーは、両親の愛情を受け、貧しいながらも幸せに育てられた。ロドニーの憧れは発明家のビッグウェルド博士で、彼の夢は、博士のような偉大な発明家になって両親の生活を助けること。ロドニーは父親の後押しを受け、夢を叶えるために、博士に会いにロボットシティへと向かう。しかし、シティでは、中古ロボット一掃を目論むラチェットが力を持ち、ビッグウェルドは行方不明になっていた・・・。

<以下、ネタバレ含みます。未見の方、ご注意ください。>

CG映画を観るたびに思うんだけれど、アニメーション技術の進歩は、本当に目覚ましいものがある。慣れきってしまっているため、もはや驚くということは少ないのだが、この『ロボット』の映像レベルもやはり極めて高い。まず、それだけでも十分に観る価値はある。

テーマも良い。「夢を叶える」。シンプルだけれど、やはりこれって、子供にとっても大人にとっても永遠のテーマだ。特に、ロドニーの父親の使い方がうまい。音楽家の夢を諦め、皿洗いロボットとしての生活を送る父親。ロドニーは、そんな父親を尊敬しながらも、「自分はそうはなりたくない!」と勇気を出して街を飛び出していく。そして父親は、夢を叶えられなかった自分の分もと、息子の背中を優しく押してあげるのだ。これを観て、自分の人生と重ね合わせる大人の観客も少なくないではないだろうか。かくいう僕もそうでした(笑)

そう、大人も十分に楽しめる映画だ。出来も悪くない。
しかし、それでもやはり、どこか物足りなさを感じてしまう。
それは、僕が大人になってしまったからではないだろうか。

夢を叶えるために街を飛び出すロドニー。そこで、彼はたくさんの危機を迎える。夢を諦めそうにもなる。しかし、仲間に支えられ、彼は夢を貫き通す。そんな彼に周囲も刺激を受け、協力する。そして、夢の実現。家族も幸せに。めでたしめでたし。

絵に描いたような感動的なストーリー。しかし、不思議と心が揺さぶられない。それどころか、物語の底の浅さに、不満すら感じてしまう。

自分が子供のときは、どうだっただろう?こういう話が、いちばん好きだったような気がする。適度にコミカルで、適度にスリリングで、そして適度に感動できるような、そんなお話が。

でも、いまの僕は違う。ファンタジーや感動ドラマが好きなのは、いまも昔も変わらない。でも、何かプラスアルファや陰影のようなものがないと、単純に感動できなくなってしまったのは事実だ。

『ロボッツ』のようなおとぎ話を観ながら、ふとそんなことを考えてしまう自分に、少し寂しさをおぼえた。
ひょっとするとそれは、人生をガムシャラに突っ走る、主人公ロドニーに対する嫉妬だったのかもしれない。
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by inotti-department | 2005-08-25 10:56 | cinema
『皇帝ペンギン』 ~”かわいい~!”だけじゃ済みません!~
e0038935_15203684.jpg満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

『皇帝ペンギン』(2005、仏)
   監督 リュック・ジャケ
   声の出演 大沢たかお  石田ひかり  神木隆之介

犬でも猫でも、動物を見るたびに、「かわいい~!」と歓声をあげる人がいる。

まぁ、わからんでもないのだけれど、あんまりしつこく「かわいい!かわいい!」って言ってるのを目にすると、なんだか急にウソっぽく見えてきて白けてしまうことがある。
あと、赤ちゃんとか。

しかも、赤ちゃんとか動物を前にしてクールな顔をしていると、冷酷な人間みたいな扱いを受けたりするのだから恐ろしい。いいじゃない、別に虐待しようってわけじゃないんだから(笑)

そんなわけで、話題の『皇帝ペンギン』を観に行く前も、劇場中が「かわいい~!」ムードで満ち溢れてたら嫌だなぁ、と軽い不安を抱いていたわけである。

しかし、その不安は杞憂に終わった。この映画、ただ「かわいい~!」だけじゃ済まされない、なかなかの曲者だったのである。

さて、ストーリーの簡単な紹介。
氷に覆われたマイナス40℃の世界、南極。その極寒の地で、ペンギンたちがいかにして生きているのか。カメラは、出産から子育て、そして旅立ちまでを、ドキュメンタリー形式で追う。

<以下の感想、ネタバレ含みます。未見の方、ご注意くださいませ。>

最初は「かわいい~!」という声があがっていた劇場だが、開始直後にすぐ凍りついた。出産をするために故郷へと列をつくって行進するペンギンたち。しかし、過酷な行進ゆえ、脱落する者も出てくる。脱落したペンギンは、吹雪の中、孤独に泣き声をあげる。しかし、その声は誰にも届かない。そして、そのペンギンは、吹雪に飲みこまれながら、死んでしまうのだ。

その後も、思わず目を背けたくなるようなシビアなシーンが次々に登場する。海で魚に食べられてしまう母ペンギン。苦労して産み落とした卵を凍らせて死なせてしまい、悲しみに暮れる夫婦。自分の子供が死んだことに混乱し、他のペンギンの子を奪い取ろうと襲い掛かる母ペンギン、などなど。

リアルかつシビアな描写。ペンギンの世界も楽じゃない。弱き者は脱落する、まさに弱肉強食。みんな、生きるために、必死に、それこそ命を懸けて頑張っているのだ。

と、こんな風に書くと、「えー、暗い話は嫌だなぁ。癒されるって聞いてたから、観ようと思ってたのに・・・」とガッカリされる方もいるかもしれない。
が、ご心配なく。ただただ過酷なペンギン世界を描くのが、この作品の目的なわけではない。むしろ、シビアな世界をしっかりと描いているからこそ、感動と癒しの効果もより深まるのだ。

特に感動させられるのが、ペンギンたちのチームワーク。寒さに耐えるため、ペンギンたちは身を寄せ合って固まりを作る。さらに、一番外側のポジションが最も寒いため、外側で耐えたペンギンたちは、その次は一番内側に移動して暖まるのだ。なんたる団結力。自分のことしか考えない者が多い人間たちと、えらい違いだ。

両親が子供に注ぐ愛情にもまた心洗われる。ヒナへのエサをゲットするため、夫のもとを離れて吹雪の中を歩き始める母ペンギンの勇気。そして、そんな妻の戻る日を信じ、子供を必死に守る父ペンギンの忍耐。

極めつけはクライマックスだ。親ペンギンは、子供を成長させるため、断腸の思いで子ペンギンを解き放つ。親離れできない子ペンギンは、自分を置いて歩いていってしまう親ペンギンを必死に追いかける。しかし、親ペンギンは振り向かない。スタスタ歩いていってしまう。そうして覚悟を決めた子ペンギンたちは、両親たちがそうしてきたように、みんなで身を寄せ合って寒さに耐えるのだ。

声優陣のナレーションも効果的。
普段、僕は「吹き替え版」はあまり観ないのだけれど、今回は大沢たかお他による日本語吹き替え版を選択した。オリジナルにしたって、ペンギンにとってはどうせ”吹き替え”なのだから、それだったらペンギンに集中するために母国語で観ようと思ったからだ。

字幕版は未見なので比較はできないが、この選択は正解だったと思う。少しあざとく感じるセリフもあるのだが、ペンギンたちの懸命な頑張りを、吹き替えが優しく包み込んでいる。最後の「また出会って、一緒にダンスしましょうね」というセリフも、本当にそう言ってるかもしれないなぁって思わせてくれるぐらい、すんなり心に入ってきた。

決して動物好きとは言えない僕だけれど、今回ばかりは、ペンギンたちにしてやられた。
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by inotti-department | 2005-08-24 23:20 | cinema
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』 ~”このミス!”制覇はダテじゃない~
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満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

法月綸太郎・著
『生首に聞いてみろ』
2004、角川書店


「このミステリーがすごい!」という本を知っているだろうか?

簡単に説明すると、その年1年間に出版されたミステリー小説のランキングを発表する本である。
宮部みゆきや横山秀夫など、人気ミステリー作家の新作から、新進気鋭の若手作家の傑作ミステリーまで、幅広い作品がランキングに名を連ねる。かなりしっかりと集計を取っているので、このランキングに対する書店・読者の信頼度は年々高くなってきている。
本屋さんで、「このミス」のトップ10にランクインした作品を集めてコーナー展開しているのを目にしたことがある人も多いのではないだろうか?

さてさて、その「このミス」2005年版の栄えある第1位に輝いたのが、法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』である。

実を言うと、この作家、名前は辛うじて聞いたことはあったが、実際に本を手に取ったのははじめて。にもかかわらず、読んでみようと思ったのは、要するに「このミス」1位だったから。やれやれ、なんたるミーハー(笑)

でも、「このミス」の上位に食い込んでくる作品って、いざ読んでみると、やはりそれぞれ読み応えがあって面白い。だから、とりあえず1位の作品は読んどけ!みたいなところが、私の中にはあるのだ。

さて、簡単なあらすじ。
作家で探偵の法月綸太郎は、知り合いの翻訳家・川島敦志からある調査を依頼される。その内容は、「先日病気で死んだ敦志の兄・伊作が生前に制作した彫刻像の首が何者かによって切られてしまった。この像は、伊作の娘・江知佳をモデルにした”人体直取り彫刻”であり、首を切られたのは江知佳に対する殺人予告である可能性があるので、調査してくれ」というものだった。敦志は、犯人は江知佳のストーカー・堂本ではないかと疑う。一方、綸太郎は、事件のカギは16年前にあると睨む。伊作と妻・律子の離婚。その原因となったとみられる、律子の妹・結子と伊作の不倫。伊作の子を妊娠し、自殺した結子。その半年後の、結子の夫・各務と律子の電撃再婚。次第に見えてくる事件の裏側。そんな中、行方不明になっていた江知佳の生首が発見される。さて、犯人はいったい誰?そして、16年前、伊作ら4人に何があったのか?

と、前半のあらすじを書いてはみたものの、残念ながらこの小説が面白くなるのはこのあと。本当なら、その後の展開をもう少し細かく紹介したいのだが、なにぶん物語の展開がものすごく緻密で入り組んでいるので、長くなってしまうのでここでは割愛する。(なお、詳しいストーリーは”ネタバレstory紹介”内に掲載しているので、知りたい方はそちらを参照してほしい。)

正直に言って、前半はもうひとつ話に乗っていけなかった。人体直取り彫刻や、川島一家の複雑な人間関係の説明が続き、なかなか事件の本筋が見えてこない。というより、事件そのものが、彫刻の生首が取れていたということだけなので、話の焦点が見えてこないのだ。

しかし、江知佳の生首が発見されるあたりから、話が俄然面白くなってくる。そして、真相が明らかになったとき、一見退屈に思われた前半が、実は全て伏線だったことに気付かされる。石膏像の作り方、敦志と伊作の絶縁、江知佳の謎の行動、などなど。

とにかく、ストーリーの進め方が、本当に巧い。全てを計算し尽くしたうえで、書いているのだと思う。ゴールをしっかりと見定めながら、いろいろなエピソードを小出しにしていく。

綸太郎が堂本の隣人だと思っていた人が、実は変装した堂本だったという部分もそのひとつ。そして、彼の手には大きなトートバッグ。中身は江知佳の生首だったのか!?と思わせておいて、実は石膏像の生首。
また、各務家訪問の場面もそうだ。各務の母親を名乗る女性の正体は、実は律子。しかしその律子の正体も、結局は律子になりすました結子だったのだ。

登場人物ひとりひとりの謎の行動も、最後には全て説明されるから、読み終えたあとに気持ち悪さがひとつも残らない。最後の「義弟」のエピソードなども、出来すぎだとは思うけれど、物語の締めくくりとしては見事だと思う。決して派手さはないけれど、全てを読み終えて振り返ってみると、その見事なまでに緻密な構成には、ただただ舌を巻くほかない。

2005年版「このミステリーがすごい!」第1位獲得。それも納得の、堂々たる本格ミステリーの傑作だ。

ミステリーらしいミステリーが読みたいなーと思っている方に、ぜひオススメ。
パズルがはまっていくような精巧なミステリーが読みたいなーと思っているかたには、さらにオススメ。
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by inotti-department | 2005-08-19 01:14 | book
軽く自己紹介しておきます!
ここのところ仕事が忙しくて、なかなか映画館に足を運べてません。
ということで、エンタメの感想はちょっと小休止して、今日は自己紹介を。

年齢:24歳
性別:男
職業:会社員
好きな映画監督:スティーブン・スピルバーグ、ウディ・アレン、ティム・バートン、ジム・ジャームッシュ
好きな脚本家:三谷幸喜、ウディ・アレン
好きな俳優(日本):深津絵里、唐沢寿明、西村雅彦、山口智子
好きな俳優(海外):モーガン・フリーマン、ジョニー・デップ、ニコール・キッドマン
好きなお笑い:ダウンタウン
好きな作家:伊坂幸太郎、村上春樹、沢木耕太郎、東野圭吾、スティーブン・キング
好きなミュージシャン:Mr.Children、槇原敬之、BUMP OF CHICKEN、THE YELLOW MONKEY

こんな感じです。
「いっぱい挙げすぎ!もっと絞らんかい!」と思われた方、ごめんなさい。
これでも、だいぶ絞ったつもりなんです(笑)

せっかくなので、惜しくも落選した方々も、順不同でご紹介しておきます。

周防正行、アレクサンダー・ペイン、クエンティン・タランティーノ、堤真一、佐藤浩市、鈴木京香、ジェニファー・ロペス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ロバート・デ・ニーロ、金子達仁、レミオロメン、平井堅、100s、weezer、、、

こんなところでやめておきましょう。
なんか、大事な人を忘れてしまっているような感じが消えないんですが(笑)
思い出したら、また書きますね。

といっても、こういう顔ぶれって、ちょっとしたことで変化するものです。
また変わったら、ちょくちょくお知らせします。
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by inotti-department | 2005-08-17 22:27 | 自己紹介
『宇宙戦争』 ~そのとき、あなたは戦う?逃げる?~
e0038935_152692.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆(6点)

『宇宙戦争』(2005、米)
   監督 スティーブン・スピルバーグ
   出演 トム・クルーズ  ダコタ・ファニング

「え、6点?高すぎないか?」
そんな風に感じた方も多いのではないだろうか?

2005年夏、話題の超大作『宇宙戦争』。
スピルバーグ&トム・クルーズの大物コンビ、宇宙人襲来もの、と話題も多く、公開前の期待はかなり高かった。しかし、蓋を開けてみると、その評判はボロボロ。『スターウォーズ』との”夏の一騎打ち”は、『宇宙戦争』の惨敗となっている。

そんな映画を2回観にいった人はあまりいないだろうが、ここにひとりいる。
そう、私です(笑)

先に断っておくが、面白かったからもう1回観たのではない。面白くなかったから、また観に行ったのだ。

私は、もともとスピルバーグ映画が好きなのだ。ご都合主義的なストーリー展開だとか、娯楽色が強すぎて話に中身がないだとか、えせヒューマニズムだとかいろいろと陰口を叩かれてるスピルバーグだが、その全てをひっくるめて、私は彼の映画が好きだ。どんな材料でも、誰でも楽しめるような立派な娯楽作品に仕上げる手腕は凄いと思うし、えせヒューマニストと揶揄されるが、それでも彼の作品の持っているそういう甘さが、私にはとても心地よいのだ。

そのスピルバーグが、こんなつまらない映画を作った。そんなバカな。
そして私は、それを確かめるべく、もう1度劇場へと向かったのである。

さて、簡単なあらすじ。
別れた妻から息子ロビーと娘レイチェルを預かって週末を過ごすつもりだったレイ。しかし突然、空に激しい雷鳴が轟く。そして、雷に乗って空からやって来た異性人たちは、はるか昔から地球の奥深くに眠っていた”トライポッド”を操り、人類を次々殺しはじめる。レイは、子供たちを守るため、車を走らせ妻の待つボストンへ向かうのだが・・・。

ちなみに、1回目を観終えたとき、私の満足度は4点だった。
が、前半は悪くない。人々が恐怖に逃げ惑う映像はスリルと迫力満点だし、混乱して争いをはじめる愚かな人間たちという描き方も、ステレオタイプではあるが、より絶望感をあおる。

しかし、問題はそのあとだ。後半、話はどんどんおかしな方向へ進んでいく。

<以下の感想、ネタバレ含みます。未見の方はご注意ください>

突然、ロビーが2人のもとを離れて、異性人と戦うために前線へとひとり突っ込んでいく。そのあと、2人きりになった父娘は、謎の男に出会う。この男を演じるのはティム・ロビンス。当然、物語の展開上、重要な役どころを演じるのだろうと期待する。ところが、この男の存在がよくわからない。ピンとこない会話をレイと交わしていると、やがてそこにも異性人の魔の手が忍びより、そこでこの男の出番は終了。

彼は何のために登場したのだ?そして、なぜティム・ロビンス?頭の中に次々浮かんでくるクエスチョン・マーク。そして、物語は、特大クエスチョン・マークのクライマックスへ。

世間で失笑されているのは、結局終わり方の問題だろう。宇宙人VS人間という図式の映画に、さしたるストーリーなど、もともと誰も期待しちゃいない。となれば、あとは、いかにカタルシスを感じさせてくれるか。圧倒的な力で侵略する宇宙人。なす術もなく立ち尽くす人類。さあ、人間たちよ、どうやって奴らに立ち向かう?その知恵と勇気とサスペンスに興奮させてくれれば、この手の映画は成功なのだ。

『宇宙戦争』には、それがない。レイがボストンに着くと、あれだけ猛威をふるっていたトライポッドが急におとなしくなっている。彼らは枯れてしまったのだ。何があったのか。理由もわらかないまま、レイは妻の家へ。すると、そこには妻とロビーの姿が。再会を喜びあう家族。そして、ナレーターの口から告げられるオチ。異性人たちは、地球の空気を吸って枯れてしまったのだ。地球上に住む無数の微生物。奴らを倒したのは、人類の知恵ではなく、地球の力だったのだ!

ポカーーン。そして、エンドロール。観客、失笑。こうして、『宇宙戦争』は駄作のレッテルを貼られてしまったのである。

1回目に観たときは、私も同じ感想を抱いた。私が期待していたのも、スリルに満ち溢れた戦いと、その中で生まれる家族の絆だった。しかし、その期待は見事に裏切られた。

しかし2回目、もう少し冷静に観てみたら、いろいろな発見があった。そして、スピルバーグが描きたかったことが、なんとなく見えてきたのだ。

この映画が「9.11」を意識していることは、まず間違いないと思う。瓦礫の中を頭を真っ白にして走るトム・クルーズの映像は、あの日実際にNYで起こったことそのものだ。スピルバーグは、そういう危機に対するひとつの答えを提示した。それは、「逃げる」ということ。

主人公のレイは、全く戦おうとしない。ひたすら逃げる。彼が考えたのは、ひとつだけ。愛する家族を守ること。それさえ叶うならば、人類の未来など二の次。これが、従来のこの手の映画と決定的に違う点だ。今までの主人公たちは、家族を、そして地球を守るために、武器を取って敵に立ち向かうのが常だった。この映画の中でも、ロビーや、ロビンスが演じた謎の男は、逃げてばかりのレイを批判して敵へ向かっていく。しかし、レイは、そんな彼らを必死で止めようとするのだ。

このメッセージは、とても面白いと思う。暴力に暴力で立ち向かっても、何も生まれない。かえって絶望が広がるだけだ。私たちに出来ることは、戦わないこと。大きなことは考えず、目の前の大切な人のことだけを考えればよい。この考え方には、私は大賛成だ。

そしてラストのオチの根底にあるのも同じ考え方だ。人類の知恵(ここには戦争や暴力も、当然含まれている)なんかよりもずっと偉大な、地球そのものの力。戦いなどやめて、地球に敬意を払おう。それが、スピルバーグの言いたかったことなのではないだろうか。

このメッセージは素晴らしいと思う。いまのアメリカでこういう映画が作られたと思うと、なんだか希望さえ感じる。にもかかわらず、私の満足度が6点までしか上がらなかったのは、やはりこの映画には欠点が多すぎるから。

こうやって考えると、話のテーマは案外地味なのだ。しかし、それでも派手な映画を作らなければならないスピルバーグの宿命。そもそも、その組み合わせに、最初から無理があったのだと思う。逃げ続ける映画に、カタルシスなど求めるのが無茶というもの。後半の混乱した展開をみると、スピルバーグ自身も、消化不良のまま映画を作ってしまったではないかとさえ感じる。

息子ロビーの中途半端な描き方にも、スピルバーグの混乱が見てとれる。ロビーは後半、「逃げるレイ」に対するアンチテーゼ的な存在として使われる。しかし、ロビーが戦うシーンが登場するわけではない。その後、ロビーが画面に現れるのは、ラストシーンだけ。レイが妻の家に着くと、そこにロビーがいるのだ。抱き合う父子。この、家族再会の感動シーン。スピルバーグが最も得意とする”泣かせ”のハイライト的場面だ。しかし、泣けない。感動がない。

それも全て、ロビーが先に書いたような使われ方をしてしまったせいだ。「家族の再生」と「戦争との向き合い方」、2つのテーマをロビーに背負わせるのは無茶だろう。「戦争との向き合い方」に絞るのならば、ロビーは死んでしまうべきなのだ(過激な言い方だが)。逃げたレイが生き残り、戦ったロビーが命を落とす皮肉。そこから浮かびあがる”不戦”のメッセージ。逆に、「家族の再生」に絞るのならば、ロビーはレイのもとを離れるべきではなかったのだ。

どんなテーマでも娯楽作品にすることを求められるスピルバーグの宿命。今まではそれを難なくやってのけた彼だが、今回は失敗に終わった。
それだけ、「9.11」というものは、アメリカにとって重い重いものなのかもしれない。
巨匠の腕を、かくも鈍らせるほどに。
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by inotti-department | 2005-08-16 11:33 | cinema
<小説ネタバレstory紹介>も開設しました!
<映画ネタバレstory紹介>につづいて、<小説ネタバレstory紹介>も開設します!

基本的な考え方は、<映画ネタバレ・・・>の冒頭に書いたものと同じです。

「あの小説、一度読んだんだけど、どういう話だったかなぁ。どうやって終わるんだっけなぁ」
そんな悩みをお持ちの方のために、さらっとstoryを復習できるデータベースを公開しようというのが狙いです。というか、要は忘れっぽい私自身のためのコーナーなのですが(笑)

映画版は「タイトル順」になっていますが、こちらの小説版の方は「作者順」にしたいと思います。アイウエオ順になってますので、気軽に探してみてください。

ただ、やはり完全ネタバレ状態になりますので、未読の方の予習目的でのご利用はあまりオススメいたしません。出来ることならば、復習のために使っていただければと思います。

劇場公開作の紹介が中心の映画版と違って、小説版は、新刊をガンガン紹介するという風にはいかないと思います。というわけで、たとえ古い文庫の紹介ばかりになってしまっても、温かい目で見守ってやってください(笑)
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by inotti-department | 2005-08-12 02:28 | 小説ネタバレstory紹介
小説ネタバレstory紹介 <ア行>
※完全ネタバレでstoryを紹介しています。未読の方はご注意ください。

<い>
・伊坂幸太郎『死神の精度』(2005)  ★★★★★★★★☆☆(8点)
<story> 死神である千葉の仕事は、8日後に死ぬことになっている人間と1週間接して、その人の死について「可」(実行)と「見送り」のどちらが適切かを判断すること。しかし、クールな千葉は、人間の死には何の興味もない。それが仕事だから一応しっかりと調査はするが、それによって「見送り」の結論が出されることはほとんどない。「人間は、いずれ皆死ぬ」それが、彼の基本スタンスだ。彼の楽しみは、音楽を聴くことだけ。そして彼が仕事をするときは、いつも雨が降る。そんな千葉が遭遇する、6つの物語。
①「死神の精度」:調査対象の一恵は、22歳OL。大手メーカーで苦情処理の仕事をしている。仕事内容は精神的にきつく、最近も妙なストーカーに付きまとわれて困っている。その男は、一恵を何度も指名して電話で苦情を言ってきて、しまいには「歌を歌え」という意味不明な要求をしてくるのだという。冴えない日々を過ごしている一恵を見て、千葉は結論をほぼ「可」に固める。そして調査最終日。千葉は、一恵がストーカーに絡まれて困っている場面に遭遇する。しかし、千葉はその男を知っていた。男は、有名な天才音楽プロデューサー。電話で耳にした一恵の声に衝撃を受け、彼女を歌手にするためにコンタクトを取ろうとしていたのだ。千葉は想像する。もし一恵が将来歌手になり、その歌を聴けたら・・・。迷った千葉はコイントスで決めるが、表だったらどちらにするつもりだったのかを忘れてしまう。千葉は決意する。いいか、「見送り」で。
②「死神と藤田」:調査対象の藤田は、やくざ。藤田は、自分の兄貴分を殺した栗木への復讐を企んでいた。藤田を慕う阿久津は、「藤田さんは負けない」と信じて疑わない。しかし、組の親分は、任侠を重んじる藤田に手を焼いており、藤田を罠にはめて殺すことを計画。そして阿久津は、親分から藤田の監視を命じられていた。思い悩んだ阿久津は、栗木を自ら殺すことを決意。千葉とともに乗り込むが、逆に捕えられてしまう。千葉は藤田の電話番号を栗木に教える。阿久津は千葉の裏切りに激怒する。しかし、千葉は知っていたのだ。今日はまだ7日目。藤田が死ぬのは明日だ。だから、藤田は栗木には殺されない。「藤田さんは負けない」そう信じる阿久津のもとへ、藤田は向かうのだった。
③「吹雪に死神」:今回の調査対象は、聡江という老婦人。彼女は夫ともに旅行でとある洋館に宿泊していたが、激しい吹雪でそこの宿泊客たちは誰も身動きがとれなくなってしまう。そんな中、聡江の夫・幹夫が毒で殺される事件が起こる。さらに、元刑事の権藤、若い娘・真由子も続けざまに殺される。千葉は、残された聡江たちの前で推理を披露する。宿泊客たちは全員、真由子を殺すために洋館に集まったのだ。聡江の息子に結婚詐欺を働き、彼を自殺に追い込んだ真由子に復讐するためだ。権藤を殺したのは真由子。権藤に幹夫殺しの犯人と疑われたためだ。真由子を殺したのは、権藤の息子のフリをしていた英一。彼は聡江の息子の親友だったのだ。では、幹夫はなぜ最初に死んだのか?彼は、息子の復讐を自らやり遂げようとし、料理に毒を盛り込んだ。しかし、真由子は死ななかった。なぜなら、その料理を真由子は食べず、代わりに死神である千葉が全て食べたから。そして、不審に思い、毒の確認をしたため、幹夫は死んでしまったのだ。全ての謎が解けた洋館で、千葉は「可」の結論を出すのだった。
④「恋愛で死神」:対象は、荻原という青年。洋服屋で働く彼は、片想いをしていた。相手は、向かいのマンションに住む朝美という女。店員とお客さんとして1度接して以来、ずっと密かに想いを寄せていた。朝美は、悪徳勧誘業者からの脅迫に悩んでいた。荻原はその相談に乗り、2人は意気投合する。千葉は2人の恋を見つめつつ、「可」の結論を出す。荻原は、朝美の部屋に侵入する男を目撃して、彼ともみ合った拍子に刺されてしまう。命を落とす荻原。荻原の死をまだ知らない朝美と会った千葉は、彼女から「以前ある洋服屋で、セール除外品を安く売ってもらった」というエピソードを聞く。彼女は店員の顔を覚えてなかったが、その店員こそ荻原だったのだ。
⑤「旅路を死神」:対象は、森岡という青年。母親を刺し、さらに街で喧嘩した若者を殺し、車で東北へ逃げていた。運転するのが千葉。森岡は、奥入瀬渓流でもう一人殺したいのだという。彼は5歳のときに誘拐された経験があった。そしてそのとき、犯人グループの1人の深津という男が自分を励まし、逃がしてくれたことは、彼にとってその後の人生の支えだった。しかし、森岡が家に帰ると、母親が深津と電話で親しげに話していた。なぜ犯人の1人と母親が?みんなグルだったのか。取り乱した森岡は母親を刺し、深津が現在いるという奥入瀬へと向かうことにしたのだった。しかし、千葉はある仮説を立てる。深津は犯人ではなく、彼もまた誘拐の被害者だったのでは?しかし森岡少年を不安にさせないために、犯人のフリをした。そして、恩人である深津に、母親はずっと感謝し、連絡をとっていたのではないか?真相はわからない。が、とにかく森岡は、深津のもとへ駆け寄るのだった。
⑥「死神対老女」:対象は、海辺の小さな美容院を経営するある老女。彼女は会っていきなり、千葉が人間でないことを見破る。彼女は、これまでに多くの知り合いを亡くしているため死の気配がわかるのだといい、千葉が自分の死を見に来たのだと確信する。老女は、千葉に依頼する。その内容は、街で10代の若者を勧誘して、明後日美容院へ連れてきてほしい」というもの。千葉は、その通りにする。全てが終わり、老女は理由を明かす。彼女には、音信不通の息子がいた。そして彼には子供がいた。つまり、老女の孫だ。その孫が、美容院へ来ることになったのだ。しかし、息子は条件を出した。それは、孫だと名乗らないこと。ところが、美容院には大して客がいない。だから、誰が孫だかわかってしまう。老女は、それが怖かった。だから、千葉に同世代の若者を連れてこさせたのだ。老女がカーテンを開けると、そこには晴れ間が広がっていた。千葉が初めて目にする青空。そして、千葉は気付く。老女の持っている洋服。それは、かつて自分が担当した荻原という青年の片想い相手・朝美が持っていたもの。千葉は、太陽を笑顔で見つめる老女の横顔を眺めるのだった。
<ひとことreview> 最後のエピソードを読み終えたときに浮かんでくるメッセージ。「限りある命。ならば、悔いなきように精一杯生きろ」。精一杯ジタバタ生きてきた老女が、最後に達する悟りの境地。そこに至るために必要なのは、藤田であり、荻原であり、森岡のような生き様なのだ。一見バラバラに思えた6つのエピソードが、最後の最後でひとつに繋がる。老女の正体がエピソード4の朝美で、エピソード1の一恵が6で実際に歌手になっているのは、その象徴だろう。この物語のテーマは、死というものが身近にありながら、それに気付かずに生きている人間の滑稽な姿をシニカルに描くことではない。そんな人間の姿を温かく見つめる、優しくてハッピーな物語なのだ。主人公たちがみな死を迎えながらも、各短編の後味がすこぶる良いのもそのためだろう。もちろん、常にユーモアを忘れない文章の楽しさによるところも大きい。最後、ついに太陽というものを目の当たりにする死神。それは、人間という存在に対する、温かい賛歌のように私には感じられた。

伊坂幸太郎・石田衣良他『I LOVE YOU』(2005)  ★★★★★★★☆☆☆(7点)

①伊坂幸太郎『透明ポーラーベア』: 優樹には、千穂という付き合って2年の恋人がいる。が、優樹の転勤が目前に迫っており、2人は今後に大きな不安を感じていた。そんなある日、優樹は、デート先の動物園で富樫と再会する。富樫は、5年前に姉と交際していた男。今は、一緒に来ている芽衣子と付き合っているが、現在プロポーズを留保されている状態なのだという。優樹は、姉のことを思い出す。姉は奔放な性格で、手品好きのバーテンダーやギタリストなど、10人以上の男と付き合い、別れるたびに旅に出る習慣を持っていた。富樫は、一番優樹が好きだった人。今度こそ姉が結婚するかと期待したが、やはり別れた。その後、姉は北極に大好きなシロクマ(ポーラーベア)を見に行くと出掛け、以来行方不明になった。優樹は、芽衣子が結婚に踏み切れないのは、姉が原因なのではないかと睨む。芽衣子が、「今日はシロクマを見に来た」と言っていたからだ。一方、優樹たちも、今後の遠距離恋愛を懸念し、微妙な空気になっていた。姉の別れを散々見てきた優樹には、2人の”繋がり”への不安があるのだ。その夜の花火大会。会場では、ウェイターが手品を披露し、ギタリストが音楽を演奏していた。ウェイターは、手品で花束を出して、富樫に渡す。富樫から差し出された花束を、芽衣子は受け取る。そして、会場のギタリストに、優樹は見覚えがあった。彼は、かつての姉の彼氏。そして、ウェイターもまた同じく元彼氏。”繋がり”を感じた優樹は、涙を流す。「大丈夫」優樹は、隣の千穂にそう告げるのだった。
②石田衣良『魔法のボタン』: 彼女にフラれ、傷心の隆介。幼馴染の萌枝と飲み歩き、慰められる。休みのたびに会ううちに、2人の親密度は増していく。そんなある日のデート、萌枝はおめかしをしてくる。さらに、初めて自身の恋愛話を告白。彼女は、大学の4年間、妻子持ちの男と不倫をしていたのだという。萌枝は、”魔法のボタンごっこ”を隆介に提案する。それは、右肩を押すと相手は透明人間になり、左肩を押すと石になるという遊びだ。萌枝は、隆介の右肩を押す。そして、透明人間になった隆介に、想いを告白する。それが終わると、隆介は萌枝の左肩を押す。そして、石になった萌枝を、うしろから抱き締めるのだった。
③市川拓司『卒業写真』: 木内は、同級生の渡辺と、中学卒業以来の再会をはたす。”ミンク”というあだ名の彼は、恋愛感情こそなかったが、気の許せる数少ない異性だった。ミンクから「もうひとりの渡辺が、木内さんを好きだっていう噂があった」という話を聞き、彼女は舞い上がる。もうひとりの渡辺である”かわちゃん”を、彼女は好きだったからだ。しかし、どうも話がかみ合わない。そして、彼女はハッと気付く。彼女は、勘違いをしていたのだ。彼の話に出てきた”渡辺”というのは”ミンク”のことで、実は目の前にいる彼こそが”かわちゃん”だったのだ。「”かわちゃん”が自分を好きだった」という発言に舞い上がった姿を本人に見られてしまったこのに気付き、彼女は恥ずかしさで顔を真っ赤にする。そして、そのことを彼から突っ込まれ、彼女は何も言えなくなる。そんな彼女に、彼は告白する。自分も、ずっと君を好きだったのだ、と。彼からのデートの申し出を、彼女は迷わず承諾するのだった。
④中田永一『百瀬、こっちを向いて』: 大学生の相原は、久々に戻った故郷で神林先輩とバッタリ再会する。出産間近の神林と、相原は高校時代の思い出話に花を咲かせる。神林は、高校時代、相原の幼馴染で兄貴的存在・宮崎と付き合っていた。ある日、宮崎に呼び出され、百瀬という女性と付き合っている演技をしてほしい、と相原は頼まれる。宮崎は、百瀬とも付き合っており、それを神林に隠すために、相原に協力を依頼したのだった。しかし、地味な相原と活発な百瀬では、話も全く合わない。しかし、次第に仲良くなり、宮崎と神林と一緒に4人でWデートしたりする。そのデートのとき、神林は宮崎にほおずきの花をプレゼントする。そんな親しげな2人の姿に、百瀬は取り乱す。相原は、宮崎を呼び出す。相原が、宮崎に意見をするなど、初めてのことだった。宮崎は、相原にとって、かつて命を救ってくれた恩人でもあったからだ。そんな相原の覚悟を知り、宮崎は百瀬に宛てた手紙を彼に渡す。相原は、手紙を持って百瀬のもとへ。手紙を読み、百瀬は涙を流す。宮崎は、神林を選んだのだ。2人の交際はその後もつづき、ついに、神林は宮崎の子を身ごもったのだ。宮崎は、資産家の娘である神林の資金で、父親の会社を建て直した。宮崎は、自分の夢のために、神林を選んだのだ。相原は、神林に聞く。「ほおずきの花言葉は”裏切り”。先輩は、それをあのとき知っていたのでは?」と。微笑む神林。1番の演技派は、実は神林だったのかもしれない。相原は、大学へ通うために東京へ行くとき、ホームで百瀬に告白した。そしてこれから、相原は百瀬に会いに行くのだった。
⑤中村航『突き抜けろ』: 大学生の大野は、彼女と変わった付き合い方をしていた。それは、週3回決まったときにだけ電話して、週1回だけデートするというものだ。一方、親友の坂本は、同じクラスの飯塚に想いを寄せていた。坂本は、毎週火曜日に木戸という先輩の家へ通い、皿洗いや掃除をしていた。大野もそれに同行するようになり、3人は仲を深める。しかし、そんなある日、飯塚に彼氏ができたことが判明。木戸は、その彼氏を殴りに行くと宣言する。大野はそれを止め、木戸をボコボコにする。その後、3人は富士山へ登る。そこで、木戸は言った。「オレは全盛期を過ぎた。でも、必ず這い上がってやる」と。そして、大野と坂本を頂上へ送り出す。しかし、2人は登頂を断念する。その後、坂本には新たに好きな人が。そして、大野は木戸の家へ行く。すると、あれだけ彼の部屋にあった酒が、ついに底をつく。木戸は、「これは何かの啓示だ」と確信する。そして大野は、「今から彼女に電話しなくちゃ!」と思い立つのだった。
⑥本多孝好『Sidewalk Talk』: 彼女との待ち合わせ。彼女は、いつも通り遅刻。でも、こうやって待つのも、もうこれが最後だ。レストランで、離婚届を受け取る。浮気でも借金でもないが、夫婦生活は5年で終わり。「子供がいたら、違ったかしら?」彼女はかつて、流産してしまったのだ。思い出を語り合う2人。彼女に想いを寄せる友人についていったのが、彼女との出会いだった。友人の引き立て役という立場に怒り、高価なネックレスを贈る友人の横から、拾った花を渡した。彼女は、友人ではなく自分に礼を言ってくれた。その後、何度もの偶然の遭遇を経るうちに、それらが全て奇跡に思え、彼女に告白して、交際をはじめたのだった。2人の残り時間は、あとわずか。「会社をやめる」といつになく弱音を吐く彼女に、何も気の利いたことを言ってやれない。2人は、店を出る。これで終わりでよいのだろうか?そのとき、横を通り過ぎた彼女の香りに誘われるように、ある記憶が甦ってくる。初めて、彼女の部屋に泊まった日。彼女は言った。「私は素直じゃないから、うまく謝ったりできない。だから、この香水をつけてたら、心の中で”とめんなさい”って謝ってると思って」と。しかしそれ以来、彼女がその香水をつけることはなかった。「もう少し歩かない?」彼女が提案してきた。見上げると、夜空には、奇跡のような丸い月が浮かんでいる。うなずいて、彼女とともに歩き出す。今夜、奇跡を見つけられるだろうか?と期待しながら。
<ひとことreview> 6人の男性作家による、恋愛短編集。面白い順に、①伊坂→⑥本多→④中田→②石田→⑤中村→③市川。③は、アイデアは良いが、読んでいる側はすぐに”人違い”のトリックに気付いてしまうため、話が意外なほど盛り上がらない。④②⑤は、ほとんど差がない。⑤の荒削りなパワーも魅力的。勇気をもてず冴えない日々を過ごしていた3人それぞれの最後の”突き抜け方”が、とてもユニーク。②は、王道の恋愛もの。話は平凡だが、”魔法のボタンごっこ”を用いた告白シーンが印象に残る。④は、映画のようなドラマチックな展開に、自然と風景が目に浮かんでくる。登場人物のキャラクターもそれぞれ良く、ハッピーエンドを期待させる終わり方も爽やかだ。⑥は、締めくくりにふさわしい良作。ラスト4ページの”香り”のクライマックスが、とにかく見事のひとこと。”別れ”を描きながら”奇跡”を予感させる前向きな終わり方で、読後感がすこぶる良い。そして、なんといっても傑作なのが①。人と人との”繋がり”を描いた、奇跡の物語。テーマもそうだが、構成の”繋がり”も凄い。「成田山の法則」(初詣参拝客は正月三が日に分散し、元旦に集中することはないというバランスの法則)が伏線となった、クライマックスの花火大会。ちょっとした会話や描写が全て伏線となっており、構成に少しも無駄がない。僕たちの人生には別れは付き物だけれど、みんなどこかでずっと繋がっている。作者のメッセージは、いつも温かく、やさしい。伊坂ではじまり本多で終わる、順番の妙。よくみるとただの作者「あいうえお順」なのだから偶然なのだろうが、ひょっとしたら製作側の意図的なキャスティングがあったのかもしれない。だけど、この本を読み終えた僕は、奇跡のような偶然の”繋がり”を、信じてみたい気持ちでいる。
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by inotti-department | 2005-08-12 02:27 | 小説ネタバレstory紹介
   
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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