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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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伊坂幸太郎『砂漠』 ~やっぱり面白い!伊坂流青春小説~
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満足度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)

『砂漠』
 伊坂幸太郎・著
 2005年、実業之日本社


大学に入学した北村は、4人の友人との運命的な出会いを果たす。ヤマセミのような髪型の鳥井、世界平和のためにひたすら麻雀のピンフ(平和)をあがりつづけるという変わり者・西嶋、超クールな美女・東堂、穏やかな性格ながら超能力の持ち主・南の4人だ。ひたすら麻雀に明け暮れたり、大学生ならではの素敵な恋愛をしたり、謎のホスト軍団と戦ったり、超能力を使って嫌味な評論家をやっつけたり。彼らの大学生活は、あっという間に過ぎ去っていく。


友情、恋愛、合コン、麻雀・・・。
「これぞ青春小説!」とでも言うべきキーワードがこれでもかと並べてしまうと、「なんだよ、伊坂幸太郎にしては普通っぽいなぁ」などと思われるかもしれない。でも、そこはご安心ください!決して平凡な駄作など書かない伊坂幸太郎、この『砂漠』もやっぱり一味違う”伊坂流”青春小説となっている。

いろいろな面白さがある小説だが、1つ挙げるとすれば、やはりキャラクターの魅力ということになると思う。主人公の5人それぞれが、それぞれに素敵な個性を持っている。彼らの他愛の無い会話を読んでいるだけで、こちらとしては微笑ましい気持ちになれるのだ。

特に西嶋が面白い。「世界平和のために、ピンフ(麻雀の役の名前。ちなみに漢字で書くと”平和”)をあがりつづける」と豪語したり、”プレジデントマン”なる連続通り魔男を支持したり。正直言って考え方はメチャクチャで、おそらく読む人によっては全く好きになれないキャラクターかもしれないけれど、僕には彼のデタラメな考え方がとても痛快で心地よかった。もちろん、彼の良さを生み出しているのは、語り部の北村はじめ、彼のデタラメさを温かく受け入れる親友4名の寛容さがあってのものなのだけれど。

物語は、奇妙ながらも不思議と心に残るエピソードを積み重ねながら、「春」→「夏」→「秋」→「冬」と進んでいく。4章目の「冬」の冒頭で、主人公の北村が「大学の1年間なんてあっという間だ」と呟くシーンがあるが、自分の大学時代を振り返っても、確かにそうだったなぁと思う。ところが、この何気ないセリフの背景には、実は小さなミステリー的仕掛けもあったりして・・・。これ以上触れるとネタバレになるので避けるが、本格的なミステリー作家ではないが、伊坂作品には必ず読者をアッと驚かせる小さなミステリーが潜んでいて、それも彼の小説を読むひとつの楽しさになっている。

伏線を張りながら、終盤に思わぬ形でそれを活かす持ち前の巧みなストーリーテリングは今回も健在。謎の格闘家しかり、南の超能力しかり。物語全体にちりばめられた小さな秘密も含め、オーソドックスながらも”もう1度読み返したくなる小説”にきちんとなっている。

大学時代って、本当に不思議な時間だ。いま振り返っても、「あの頃は良かったなぁ」とも思うし、「あの頃は何もしていなかったなぁ」とも思う。さらに「もう1度大学時代に戻れるなら、こういう風にするのになぁ」っていう思いもあるけれど、たぶん、ナンダカンダいって、僕は何度大学生になれたとしても毎回同じような過ごし方をするような気がする。

すごく時間があって、すごく自由で、でも決してただの子供ではなくて、けれどもピンと背筋の伸びた完璧な大人ではない。たぶん、大学時代(あるいは、それに準ずる時期)って、その人のキャラクターが確立される時でもあり、同時にその人のキャラクターが生活スタイルの違いとなって如実に現れる最初の時期のような気がする。

そういう意味じゃ、西嶋にしろ、鳥井にしろ、この小説の登場人物たちは、とても素敵な過ごし方が出来た人たちだと思う。小説の中で描かれているのは、彼らの大学生活のごくごく1部のエピソードに過ぎないのだけれど、でも、彼らは確実に前に進んでいる。そして、小説のクライマックスの5人は、明らかに、オープニングの5人よりも光輝いている。いや、西嶋は変わっていないかな(笑)。

個人的な本音を言うと、伊坂幸太郎には、僕はもっとハイレベルなものを期待してしまう。でも、そうはいっても、この『砂漠』も一級品のエンタテインメント小説であることは間違いない。
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# by inotti-department | 2006-07-15 23:08 | book
『雪に願うこと』 ~そして今日も人生はつづく~
e0038935_2320774.jpg満足度★★★★★★★☆☆☆(7点)

『雪に願うこと』(2006、日)
   監督 根岸吉太郎
   出演 伊勢谷友介 佐藤浩市

北海道・帯広のばんえい競馬場。東京からやって来た学は、なけなしの全財産をウンリュウという名の馬に注ぎ込むが、あえなく惨敗。無一文になり、ばんえい競馬の調教師をやっている兄の威夫を訪ねる。会社を興すために母親を置いて東京へ出て行った弟の13年ぶりの帰宅を、威夫はそっけない態度で迎える。威夫は、厩舎を手伝うことを条件に家に学を住ませることにする。しかし、学は、実は東京で事業に失敗し、会社も家族も失ったことを兄に言えずにいた・・・。


こんなに真面目な、直球勝負の映画を観たのは、なんだか久しぶりな気がする。家族を、仕事を、つまりは人生を、丁寧に誠実に力強く描いた良作である。

ストーリーだけじゃなく、映像に関しても同じことが言える。北海道の雄大な景色を、そして馬と人間が共生している厩舎の豊かな息遣いを、決して派手さはないがこれもまたやはり誠実なカメラワークできちんと表現している。

こういうストレートな映画には、高い実力を持った俳優の存在が不可欠なわけで、この作品に関していえば主人公の兄である威夫を演じた佐藤浩市の好演がそれにあたる。ウマイウマイとは思っていたけれど、この俳優は本当にウマイ。

威夫の弟に対する屈折した愛情。「どの面さげて・・・」と表面的には悪態をつくが、実は裏では「うちの弟は東京で社長を・・・」と自慢に思っていたり。自慢に思っていたからこそ、ふぬけた状態になりさがっている弟の堕落ぶりが許せなかったり。かと思うと、次第に力強さを取り戻していく学を気に掛け、「戸籍をこっちへ移せ」と提案したり。このお兄ちゃんの懐の深さは、この映画全体の魅力に繋がっていると思う。

一方で、主人公の伊勢谷友介に関しては、健闘はしていると思うがやや物足りなさも残る。もちろん、主人公のクールなキャラクターの問題もあるのだが、セリフや表情への感情の込め方がどうもパンチ力不足なのだ。個人的には、学の変化を演技としてももっと的確に表現してほしかったと思う。ただ、彼にとっては、力のある俳優(佐藤浩市はもちろん、小泉今日子や吹石一恵も素晴らしかった)と同じ時間を長く過せたことが、きっと貴重な経験になっただろう。今後に期待。

この映画って、愚直なまでにストレートな映画なんだけれど、それでいて全然押し付けがましくないところがまた素晴らしい。例えば、兄弟と母親の関係、あるいはクライマックスとなるウンリュウのレースシーンなど、もっとベタベタに盛り上げようと思えばいくらでもやりようのあるシーンはたくさんあったと思う。でも、この映画は、無理に観客を泣かせようとはしない。あえて淡々と描くことで、人生のシビアさ、そして奥深さをいっそう際立たせることに成功している。

ひょっとすると人によっては、最後の終わり方に物足りなさを感じた方もいたかもしれない。「もっと号泣させてよーー!」っていう不満も、それはそれで正しい感想だと僕も思う。

でも、人生って、そんなに甘いものじゃない。ハッピーエンドの映画みたいに、「めでたしめでたし♪」なんていうキリのいい瞬間なんて、おそらく永遠に訪れない。ある戦いが終われば、また別の戦いが幕を開ける。その繰り返しが、人生なのだ。

根岸監督は、あのラストシーンに、そんな想いを込めたのではないだろうか。レースの結果がどうであれ、僕たちの人生はつづいていく。大切なことは、”今日も明日も走りつづける”ということなのだ。
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# by inotti-department | 2006-07-08 23:57 | cinema
恩田陸『夜のピクニック』 ~”歩く”からこそ物語になる。~
e0038935_22562298.jpg満足度 ★★★★★★★☆☆☆(7点)

『夜のピクニック』

恩田陸・著
2004年、新潮社


「歩行祭」。それは、全校生徒が列を作り、夜を通して80キロただひたすら歩きつづける北高最大の一大イベント。受験を目前に控えた3年生の貴子は、ある1つの賭けを胸に秘めてこの歩行祭に臨んでいた。それは、3年間一度も話したことのないクラスメイト・西脇融と会話をすること。2人の間には、彼らだけしか知らないある秘密が隠されていた・・・。


全国の書店員さんが、最もお気に入りの本を1冊選ぶ『本屋大賞』。
2005年、その『本屋大賞』を制したのが、この『夜のピクニック』である。

この小説が、それだけたくさんの人から愛された理由。約400ページにわたる長編小説をあっという間に読み終えた僕には、その理由がすごくよくわかった。

『夜のピクニック』には、誰もが共感し、温かい気持ちになれる要素がたくさん詰まっている。全校生徒が1つの列を作って、夜を通して歩きつづける。そんな設定を前に、ノスタルジックな気持ちを覚えない人はほとんどいないだろう。さらにそこに、友達、恋愛、家族、幽霊といったなんとも魅力的なピースが重なりあってくるのだ。青春小説好きならずとも、もうたまらない設定だろう。

しかし、この物語、意外なほどに特別なことは何も起こらないままエンディングを迎える。いや、もちろん、細かいエピソードはいろいろあるのだが、物語全体を根底から揺さぶるような衝撃的な展開というのは一切ない。例えば、物語の最大の軸である”貴子と融の秘密”にしても、こちらが拍子抜けするほどあっさりと明らかになるし、要するにこの小説は、読者を驚かそうとか予想を覆そうとか、そういう意図は全く持っていない物語なのだ。

にもかかわらず、この『夜のピクニック』は、読者をグイグイと物語世界に引っ張りつづける。そして、一気にページをめくらせる。小説の中にたびたび登場する言葉を借りるならば、まさに、「ただ歩く、それだけのことが、どうしてこんなに特別なのだろう」ということになる。

ポイントは、”歩く”というところにあるのだと思う。例えばこれが”走る”=要するにマラソン大会であったならば、物語はまったく盛り上がらないだろう。ダラダラと歩きつづけるだけだからこそ、登場人物たちに”考える”、そして”話す”という気力が生まれるのだ。この小説の最大の魅力を挙げるならば、80キロの間に浮き沈みを繰り返す登場人物たちの”考える”過程と、真剣な打ち明け話からくだらない雑談までこちらも浮き沈みを繰り返す登場人物たちの”話す”過程を、実にリアルに誠実に描きつづけた点にあると思う。

物語は、2人の主人公、貴子と融が語り部となって進んでいくが、その視点は交互に入れ替わっていく。そして終盤、その視点が、とうとう1つに融合する。この流れがすごく自然で、決して派手さはないがとても感動的だ。

彼らとともに80キロを一緒に完走(完歩、か)した読者には、最後に、最高の読後感が待っている。
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# by inotti-department | 2006-07-07 23:43 | book
『かもめ食堂』 ~ごはんと友達さえあればいい~
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『かもめ食堂』(2006、日)
   満足度 ★★★★★★★★☆☆(8点)
   監督 荻上直子
   出演 小林聡美  片桐はいり
       もたいまさこ

フィンランドの街の片隅にある「かもめ食堂」は、日本人のサチエが1人で切り盛りする食堂だ。おにぎりを筆頭においしい日本食を提供し、ゆっくりと食事を楽しんでもらいたいという願いで始めた食堂だが、オープン以来お客さんはからっきし。そんな「かもめ食堂」に、ついに第1号のお客さんが。彼は、日本語を巧みに操る”日本かぶれ”の青年。彼からガッチャマンの歌詞を尋ねられ答えられなかったサチエは、街で見かけたミドリという日本人女性に声を掛け、ガッチャマンの歌詞を教えてもらう。

長いこと更新していなかった、このブログ。
「よし、再開しよう!」そんな気持ちになったのは、この『かもめ食堂』を観たからだ。

本当にのんびりした映画だ。何か特別な出来事が起こるわけでもない。感動的なエピソードがあるわけでもない。でもなぜだろう、僕にはこの映画が、すごく特別なモノに感じられたのだ。

人と人が触れ合う。そこに美味しいごはんがある。たったそれだけのことが、どれだけ素敵なことなのか。この映画は、改めてそのことを教えてくれた。

たぶん、この映画がこんな風に僕の心に響いたのは、観たタイミングのせいもあったのだと思う。北朝鮮がミサイルを7発日本に向けて発射した翌日という、そのタイミング。

僕がそのニュースを知ったのは、ちょうどワールドカップの準決勝を放映していたNHKに映し出されたニュース速報によってだった。寝ぼけ眼でドイツを応援していた明け方の僕の心を揺さぶるのに、そのニュースの衝撃度の大きさは十分すぎるほどだった。

決して世界は安泰ではない。大丈夫ではない。その瞬間、僕が長年患っていた”平和ボケ”という病は、完治した。

そして翌日、『かもめ食堂』を観た。そこでは、素敵な日本人と素敵なフィンランド人が、おいしいおにぎりを頬張りながら、ニコニコ微笑みあっていた。

もちろん、『かもめ食堂』はフィクションだ。『ミサイル発射』は現実だ。

でも、僕は、信じてみたいと思ったのだ。美味しいごはんと温かい友達がいる限り、きっとこの世界は大丈夫だって。

そして同時に、あの国の思考がおかしくなっているのは、その2つが決定的に欠けているからなのだろうということにも気付かされた。いま世界がやるべきことは、ミサイルを打ち返すことでも経済制裁でもなく、この映画をあの国の人たちに見せてあげることだ!

って、それは言い過ぎか(笑)。
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# by inotti-department | 2006-07-06 22:09 | cinema
ブログ再開します!!
みなさま、たいへんご無沙汰しておりました。

数ヶ月ぶりに、こうしてブログ用の記事を書いております。

多少なりともこのブログを楽しみに、時々覗きに来てくださっていた方がもしもいらっしゃったとしたら、その方にはただただお詫びを申し上げたいと思います。

更新をサボっていた理由はいろいろありますが、ゴチャゴチャ言い訳はいたしません。全部ひっくるめて、私の個人的な理由としか言いようがありませんので、ここでタラタラとそんな弁解をしても、世間の方々にとってはただただ退屈な時間となってしまいますので、省略します。

ということで。

ブログ再開!!

今までよりさらにパワーアップして!ということはありません(笑)。今まで通り、マイペースにツラツラと書いていきたいと思います。

興味のある方は、どうぞお付き合いください。
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# by inotti-department | 2006-07-06 21:28 | 自己紹介
『うつせみ』 ~静かな愛のファンタジー~
e0038935_20393963.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)

『うつせみ』(2004、韓)
    監督 キム・ギドク
    出演 イ・スンヨン  ジェヒ


留守宅に侵入し、まるで自分の家のようにひとときを過ごす。寡黙な青年テソクは、家から家へとバイクで移動しながら、毎日をそんな風に過ごしていた。そんなある日、いつものように侵入したある家で、ソナという女性と出会う。彼女は、夫から暴力を振るわれ、心身ともに深い傷を負っていた。仕事から戻ってきた夫に仕返しをしてくれたテソクに、ソナは次第に心を許していく・・・。


これほどセリフの少ない映画を観たのは、初めてかもしれない。

もっとシンプルなラブストーリーのようなものを想像していたのだけれど、あそこまでいくと、もはやシンプルというかなんというか・・・。最後まで観終えて、結局この映画はひとつの寓話というかファンタジーだったのかな、という印象を抱いた。

そもそも、キャラクターにまったくリアリティが感じられない。映画の冒頭から、僕には主人公のテソクという人間の考えていることが全然掴めなかった。もしも、この映画がセリフを排除していることの狙いが登場人物たちの心理模様をより浮き彫りにすることなのだとしたら、その狙いは僕という観客に対しては残念ながら功を奏さなかった。

おそらく、テソクという人間もものすごく深い傷を持った青年なのだと思う。映画の中ではいっさい彼という人間のバックグラウンドは描かれないが、彼のあの陰影に富んだ表情を見ているだけでそれは伝わってくる。そのテソクとソナが、運命的な出会いをきっかけに互いの傷を癒していく物語ってことなのかな?と、考えてはみるものの、やっぱりリアルじゃないんだよなー。そんなことをぼんやりと考えながら、映画の中の時間に身を委ねていた。

そしたら、あの後半の展開だ。やっぱり、前半に僕が感じていた違和感というのは、見当ハズレなものではなかったんだと思う。ひとりひとりのキャラクター、ひとつひとつのエピソードをリアルに描いていくような映画ではないのだ、この映画は。

とかなんとか言いながら、こういう映画って嫌いじゃないんだけどね。あるひとつの愛を、静かに丁寧に描いていく物語。ひとつひとつの仕草や表情の微妙な変化にまで細心の注意を払って撮影しているのがよくわかる。特に、2人がはじめてキスをするシーン、そしてラストの2人のシーンなんかは、もう素晴らしいのひとこと。

全面的に大絶賛とはいかないが、韓国映画界の奥行きの広さを改めて思い知らされた。
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# by inotti-department | 2006-03-28 21:38 | cinema
『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』 ~コケてるのは、サブタイトルのせいだと思う(笑)~
e0038935_22513541.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)

『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(2005、英=米)
 監督 ニック・パーク スティーヴ・ボックス
 声の出演 ピーター・サリス R・ファインズ

町で最大のイベント「巨大野菜コンテスト」を目前に、人々の胸は高鳴っていた。しかし、彼らを悩ませているのがウサギ。野菜が大好物のウサギたちが、せっかく育てた”作品”を狙っているからだ。発明家のウォレスとその飼い犬グルミットの仕事は、そんなウサギたちを捕捉すること。しかしそんな中、超巨大な”ウサギ男”が町を荒らしはじめる・・・・。


『千と千尋の神隠し』に続いてアカデミー賞受賞が期待された『ハウルの動く城』。そんな日本アニメ界の期待を見事に打ち砕いたのが、実はこの『ウォレスとグルミット』だったって知ってました!?

僕はそのことは一応知ってたのだが、この『ウォレスとグルミット』が世界に何千万人ものファンを持つ超人気シリーズだということは知らなかった。恥ずかしながら。そうなのだ、実は世界的には大変な作品なのだ、この映画は。

にもかかわらず!この日本では、まーーったく話題になってない。「春休みといえばアニメ!」の定説通り、『ドラえもん』も『ワンピース』もきっちりトップ10入りしているというのに、だ(笑)。

ということで、「どんなもんだろ?」と半信半疑で観に行ってきました。

感想。ふむふむ。まずまず面白いッスよ。「世界的な・・・」とか「アカデミー賞最優秀・・・」とか大げさな形容詞がつくほどの傑作だとは思わないが、子供も大人も十分に楽しめるアニメ作品にはなっていると思う。

僕はあまりアニメーションの技術には強くないのだが、こういうアニメを”クレイ・アニメ”というらしい。要するに、粘土の人形を1コマ1コマ動かしながら撮影をしていくというわけ。すごく手がかかっているのだ。だからというわけじゃないが、製作者たちが愛情を注いで作った映像は、たしかにとってもユニークでかわいらしい。

そんな映像の中で躍動するキャラクターたちがとっても良い。ウォレスとグルミットのコンビネーションが最高なのだ。大変な状況なのに妙にポジティブですっとぼけてるウォレスもいいし、頭が切れてやけにシニカルなグルミットも面白い。

作る側は一生懸命やっているのに、じゃあなんでこの春休みにヒットしないのよ!?って、原因はわかってる。タイトルだな、タイトル。

『野菜畑で大ピンチ!』って(笑)。ただでさえアニメの場合、油断すると大人は誰も見向きもしてくれないのだから、宣伝の仕方には細心の注意が必要だ。『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』のピクサーは、そのへんが非常にウマイ。「これは子供向けのアニメじゃないんだよ」ということを、予告編やポスターなどで上手に浸透させる。

それが、『野菜畑で大ピンチ!』って(笑)。これはマズイっすよ。めちゃめちゃ安っぽいもん。いまどき、『週間少年ジャンプ』のマンガのタイトルだって、こんなの付けるまい(笑)。

タイトルだけで食わず嫌いになってる方がもしもいらっしゃいましたら、そこはグッと我慢して劇場へ行ってみてください。後半はやや失速しますが、中盤あたりは笑えるシーンもたくさんあってなかなかのものですよ。
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# by inotti-department | 2006-03-25 23:28 | cinema
『博士の愛した数式』~こんな授業があったらいいな~
e0038935_11545276.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆(6点)

『博士の愛した数式』(2006、日)
   監督 小泉堯史
   出演 寺尾聰  深津絵里  吉岡秀隆


数学教師のルート先生は、新学期最初の授業で自己紹介をする。そこで語られたのは、自分と数学との出会い、彼が「ルート」と呼ばれるようになった理由、そして彼が”博士”と一緒に過ごした日々について・・・。ルートが10歳のとき、母親が家政婦として”博士”の家に通うようになった。博士は、事故の後遺症で、記憶が80分しかもたなかった。ある日、家政婦に10歳の息子がいることを知った博士は、息子も一緒に家に連れてくるように彼女に命じる・・・。


小川洋子のベストセラー小説の映画化。

なかなか良く出来ているのではないだろうか。決して派手さのあるストーリーではないし、同時期公開の『THE有頂天ホテル』と比べると、いかにも話題性に欠ける。でも、地味ながらもロングヒットを続けているのは、この映画がもっているやさしい雰囲気に多くの人が共感したということなんだと思う。それは、原作に関しても全く同じだろう。

ひょっとすると、原作を未読の方の中には、大ベストセラーの映画化ということで大きな期待とともに劇場へ足を運んだ人も多かったかもしれない。そして、「あれ?ずいぶん地味な話だな。原作とは違うのかな?」などと感じたかもしれない。でも、ご安心ください(笑)。原作もこんな感じです。無理に盛り上げず、感動を押し付けようともしない、そういうナチュラルな物語なのだ。

『博士の愛した数式』の最大の魅力は、数学というとっつきにくい題材を扱いながら、立派なエンタテインメントとして成立しているところだと思う。ルート先生の授業、博士の授業。キャラクターたちの数学・数字への愛情が画面いっぱいに溢れていて、それがそのまま観ているこちらにまで伝わってくる。それが、何よりも素晴らしい。

これは、「数学(算数)なんて嫌い!」と思っている子供たちにこそ観てほしい映画かもしれない。僕も決して子供の頃、数学を好きだった人間ではないけれど、この映画の中で語られる数学や数字の話は、もっとずっと聞いてみたいと思った。「子供の頃、こういう授業を受けていれば、いまごろきっと・・・」というのは、ただの言い訳(笑)。

僕が原作を読んで感じた魅力も、これと全く同じだった。そういう意味では、小泉監督が感じたことも同じだったのだろう。数学・数字の魅力をしっかりと映画を通じて伝える。そのことを念頭に作品を作り上げたということが、映画を観ているとよくわかる。例えば、大人になったルート先生の授業を軸に物語を進行させる手法などは、その象徴。これは原作にはない映画オリジナルのシーンだが、結果的には大成功だったと思う。

一方で、僕が原作の中で好きだったシーンがいくつか省略されていたのは少し残念だった。特に、物語の中盤から終盤にかけて、物語を盛り上げる工夫がこの映画には欠けている。映画全体に一貫している”やさしい空気感”が魅力とはいえ、もっと心揺さぶられるような印象的なシーンやエピソードがあってもよかったのかな、と思わなくもない。

俳優陣の中では、大人になったルートを演じた吉岡秀隆が、短い出番ながらも好演。寺尾聰もさすがに上手いが、僕がイメージしていた”博士”像とは少し違った。
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# by inotti-department | 2006-03-18 12:15 | cinema
『ブロークバック・マウンテン』 ~驚くほどシンプルな、素晴らしきラブストーリー~
e0038935_22593916.jpg満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8点)

『ブロークバック・マウンテン』(2005、米)
   監督 アン・リー
   出演 ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール

1963年、ブロークバック・マウンテン。山でテントを張りつつ羊の世話をする仕事に従事することになったジャックは、そこでイニスという男と出会う。寡黙なイニスと、無邪気なジャック。最初はウマが合わない2人だが、過酷な環境で共に過ごすうち、次第に友情が芽生えはじめる。そして、凍えるほど寒い夜、2人はテントの中で愛を交わす。しかし、互いへの熱い想いを胸に抱えたまま、冬の訪れとともに2人は山を下りる。その後、互いに結婚し家庭を持つが、あの夏のブロークバック・マウンテンでのときめきは、2人の中で消えることはなかった・・・。


今年度のアカデミー賞。作品賞の大本命と言われながら、『クラッシュ』に賞をさらわれてしまった問題作『ブロークバック・マウンテン』。

この映画の何が”問題作”なのかというと、そのテーマ。少し雑な言い方をするけれど、要は「ホモ映画」なのだ。男と男の、禁断の愛。一説によると、保守的なアカデミー会員にとって「同性愛」は受け入れがたいテーマであり、そのあたりが原因で作品賞を逃したのでは、という見方もある。

で、僕の感想。いったい、この映画のどぉーーーこが”問題作”なのさ!全然、何の問題もないよ。何にも過激じゃない。教育に悪いなんてことも全くないし、別に衝撃的なシーンがガンガン続くような映画でもない。もしもこの映画が”問題作”だとみなされたのならば、僕にはアカデミー会員という人たちが全く理解できない。

これは、ラブストーリーだ。驚くほどシンプルで、驚くほどピュアで、そして驚くほど切ない、とっても魅力的なラブストーリーなのだ。この映画の中で描かれる全ての感情が、僕には手にとるように理解できたし、心から共感できた。とても素晴らしい映画だと思う。

「同性愛」というものがなぜ存在するのか、僕にはよくわからない。僕は同性の誰かに対して、女性を好きになるのと同じような感情を抱いたことは1度もないし、おそらく今後もないと思う。でも、この映画を観て、わかったことがある。それは、異性を好きになるのも、同性を好きになるのも、きっかけは同じようなものだろうということ。

たまたま、なんだろうと思う。気が付いたら、自分は同性に対してドキドキを感じる人間になっていた。あるいは、そういう人間なんだと気付いた。それだけのことなんだろうと思う。映画の中のジャックとイニスも同じ。気が付いたら、相手を好きになっていた。気が付いたら、抱き合っていた。「男&男」だろうが「男&女」だろうが、恋愛の始まり方にはなんら変わりがない。

そんな2人を、ブロークバック・マウンテンの雄大な景色が、やさしくやさしく包み込む。美しい。もう何も言葉の必要がないぐらい、ただただ美しい。ホント、いいタイトルだよなぁ。2人の美しい愛の象徴、それがあの美しい景色なのだ。

しかし、一方で、世間は山のようにやさしく2人の愛を受け入れてはくれない。「同性愛」に対する、圧倒的な偏見。嫌悪感。特に、1960年代・70年代というこの映画の時代は、今以上にその風潮は強かっただろう。

そして、愛を素直に受け入れられないのは、何も世間だけじゃない。当の本人たち、ジャックとイニスも同じ。2人も、自分の中に存在する”許されない感情”に戸惑い、悩み、葛藤する。「男&男」と「男&女」の恋愛の唯一にして最大の違いは、その点だろう。愛する2人が、その想いを貫くことさえ、困難になってしまうのだ。

また、苦しむのは何も本人たちだけじゃない。周囲の近しい人たち。彼らもまた、それぞれに葛藤する。イニスの妻。ジャックの妻。イニスの娘。ジャックの両親。スタンスはそれぞれに違うが、彼らもまた葛藤と戦い、思い悩む。

イニスのキャラクターがすごく良い。物静かでクールな男。一見、「ジャックはイニスが大好きだけど、イニスは果たして?」と疑いそうになるほど、彼は気持ちをなかなか表に出さない。その彼が、ジャックと山で別れたあと、激しく号泣する。このシーンの、なんと美しく切ないことか。この瞬間、イニスがどれだけジャックを愛しているかということがはじめて映画の中で明らかになる。

中盤の複雑な感情の揺れにも、そのあまりの切なさに激しく心揺さぶられる。妻との離婚。それでも、彼はジャックのもとに飛び込むことができない。世間と自分とのバランス、娘の存在、そして幼い日に目撃した、同性愛者の殺害現場・・・。

2人の愛に、ハッピーエンディングは訪れるのか?映画の後半には、誰もが願うようになるだろう、2人の幸せを。観客をそういう気持ちにすることが出来た時点で、この映画が「傑作」になることは約束された。

今年のアカデミー賞。『クラッシュ』もたしかに良い映画だ。作品の完成度だけ取るならば、確かに『クラッシュ』に分があるだろう。

でも、個人的な思いを言うならば。『ブロークバック・マウンテン』に、切なくも美しい2人の男性の愛の物語に、それは与えられるべきだったと僕は思っている。

<以下、終盤のネタバレ含みます。未見の方、これから観られる方はご注意ください。>

しかし、2人の幸せを祈りつつも、僕は心のどこかで覚悟していた。2人の愛に、切ない結末が待っているのであろうことを。そして、あっけなく、前触れもないままに訪れる悲劇。悲しんだり、泣いたりする時間さえ与えられない。あまりにも突然の悲劇。

理由はまだいいのだ。そこまでは、まだ。問題は、それが発覚するに至った、その相手。それが、”ジャックとイニス”ではなかったということ。その事実が、もう感情のやり場がないほどに、あまりにも切ない。

そして、ラストシーン。
うまく言えないけれど、これはこれでハッピーエンドなのかもしれないなって、僕はそんな風に感じた。あの瞬間、やっと2人は、全ての制約から解放されて一緒になれたのだから。
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# by inotti-department | 2006-03-15 23:49 | cinema
『僕のニューヨークライフ』~ウディ作品はいつも安心~
e0038935_2274174.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6点)
『僕のニューヨークライフ』(2003、米・英・仏・蘭)
  監督 ウディ・アレン
  出演 ジェイソン・ビッグス ウディ・アレン 
      クリスティナ・リッチ

NYで暮らす駆け出しのコメディライター・ジェリー。彼には、アマンダという同棲中の恋人がいた。奔放な性格のアマンダに振り回されっぱなしのジェリーだが、彼女のことを心底愛していた。しかし、ここ半年、アマンダは彼とのセックスに応じてくれない。ジェリーは、コメディ作家の先輩ドーベルに相談するが、風変わりな性格のドーベルは「彼女は絶対に浮気している」と断言し、一緒にカリフォルニアへ引っ越そうと提案してくるが・・・。


コメディ界の大御所、ウディ・アレン監督の待望の最新作。

まぁ、マンネリというか、なんというか、「これぞ、ウディ・アレン映画!」と言わんばかりのキーワードのオンパレード。ニューヨーク、セックス、精神科医、コメディ作家、ブラックジョーク、ジャズ・・・。

この人が作る映画っていうのは、良くも悪くも似たような雰囲気のものになる。だから、この映画も、「ウディ・アレンいいよね」って人には十分面白いと思うし、「ウディ・アレンは嫌い。わからん」という人には全然楽しめないと思う。まぁ、毎度のことだから、改めて言うこともないんだけれど(笑)。

僕は、もちろん前者。何が好きって、やっぱりあの彼の映画だけが持ってる独特の世界観なんだよね。例えば、冒頭のクレジットの出し方。例えば、バックで流れるジャズのBGM。例えば、時々イヤになるぐらい延々と喋りつづけられるジョーク混じりの会話。要するに、とってもオシャレなのです、僕にとってこの人の映画は(といっても、”新しい”という意味では全くなく。どちらかといえば、あの”クラシック”な感じがオシャレというか)。

この『僕のニューヨークライフ』に関しては、ストーリーや設定のアイデアに特別なユニークさは感じられない。物語だけを追うならば、過去に彼が作ってきた映画群の焼き直しでしかないと思う。その点は、時々こちらが驚嘆してしまうようなユニークなプロットを考えつくウディ・アレンを愛する僕としては、今回はちょっと残念。

<以下、ちょっとだけ終盤の展開のネタバレします。未見の方は、ご注意ください。>

その中で、興味深かったのは、後半の展開。主人公ジェリーがNYを出る、という展開は少し意外といえば意外だったかも。

ウディ・アレンといえば、NY。なんだかんだ言われながらも、彼自身も製作の拠点はずっとNYに置いてきた。その彼の分身とも言える主人公を、NYとバイバイさせるとは。そこで思い出されるのが、2005年製作の『マッチ・ポイント』(今年のゴールデングローブで作品賞にノミネートされるなど、非常に欧米での評価が高い作品。日本では、秋に公開とのこと。)から、彼が製作の拠点をロンドンへ移した、という話。

何か思うところがあったんだろうなー。ひょっとして、彼自身もさすがにマンネリを感じはじめていて、もう1度新しいテイストの映画を作りたいと思いはじめたのかな。もしかすると、そういう彼の想いが、主人公の行動、あるいはドーベルのアドバイスには反映されているのかもしれない。「自分やドーベルとは違う道を、ジェリーには歩ませたい」なんてね。

何はともあれ、相変わらずのウディ節は居心地サイコー。
これからも、オシャレで楽しい映画を作りつづけてほしいものです。
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# by inotti-department | 2006-03-11 22:43 | cinema
『クラッシュ』 ~誠実で精巧な”アカデミー賞受賞作”~
e0038935_2147036.jpg満足度 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)

『クラッシュ』(2005、米)
   監督 ポール・ハギス
   出演 サンドラ・ブロック ドン・チードル


夜のLAで起こった1つの交通事故。そこから出てきたのは、黒人刑事ルイスの死体。同じく黒人刑事のグラハムは、捜査に乗り出す。一方その頃、同じLAの様々な場所で、様々な人たちがそれぞれの葛藤と戦っていた。雑貨屋を営むペルシャ人は、イラク人と間違われてテロリスト扱いを受ける。裕福な黒人夫婦は、人種差別主義者の白人刑事から辱めを受ける。若き黒人2人組に車を奪われた夫婦は、家にまで強盗がやってくるのではないかと怯える。それぞれの想いを胸に、彼らは同じ夜を超えていく・・・。


今年度のアカデミー作品賞、受賞作は『クラッシュ』に決まりました!

前評判では、『ブロークバック・マウンテン』が大本命と言われてたので、ビックリした映画ファンも多かったかもしれない。といっても、今年の候補作は日本未公開のものも多かったし、日本人の僕たちにとっては、予想のしようもなかったのだけれど。

ということで、アカデミー賞が発表された翌日、さっそく『クラッシュ』を観てきました!昨年、アメリカで最も評価された映画、その出来栄えはどんなもんざんしょ。お手並み拝見ってな気持ちで劇場へ行ったら、いたいた、同じこと考えてる同類の仲間たちが(笑)。夜8時50分からのレイトショーだってのに、席は半分以上埋まっていたから驚き。相変わらず、日本人は賞に弱い。もちろん、自分も含めて(笑)。

感想。
うんうん、さすがによく出来てます。すごく誠実に作られているし、最後までスキがない構成は見事のひとこと。しかも、後半へ進むに従って映画がどんどん面白くなっていく。とっても、いい映画だと思う。

何が素晴らしいって、やっぱりひとりひとりの人物描写。いろんな登場人物が出てきて、ひとりあたりの持ち時間はすごく限られてるんだけれど、誰ひとりとして”いいかげん”に扱われていない。とても誠実に、丁寧に、全ての人物を映画の中にしっかりと存在させている。

しかも、みんなすごくリアルな人間なのだ。人間って、「この人は善人で、あの人は悪人」なんて単純なものじゃないはずなんだけど、どうしてもフィクションの世界だとステレオタイプな人物設定になりがち。でも、この映画の登場人物たちはそうじゃない。善人かと思ってた人が思いもかけない行動に出たり、その逆もまたしかり。だから、ひとりひとりが抱えている痛みや葛藤が、すごくヒリヒリと観ているこっちに伝わってくるのだ。そういう誠実さこそ、この映画の最も素晴らしいところだと思う。

それにしても、人種差別というのは、すごく難しい問題だ。ましてやアメリカという国には、世界中のありとあらゆる人種が集結している。この『クラッシュ』という映画は、アメリカが抱える闇の部分を、改めて真剣に取り上げて問題提起してみせている。

差別っていうのは、もう人間の性(さが)みたいなものなのかもしれない。って、こんなこと書いたら怒られるかもしれないけれど、そういう面って誰しもが多かれ少なかれ持っているんじゃないかな。例えば、道を歩いていて怖そうな顔したお兄さんが歩いてきたら、なんとなく目をそらしてしまう。例えば、デパートで奇声を発している人がいたら、なんとなくジロジロ見たり舌打ちしたりしてしまう。こういう行動だって、言ってみればひとつの差別みたいなものだと思うのだ。

この映画の中でも、たびたびそういう人間の一面が描かれる。病的なまでに黒人を嫌悪する女性。ペルシャ人を見ただけでテロリスト扱いする人。黒人の女性に権力を振りかざして嫌がらせする白人刑事。自分が黒人だということを誇りに思えず、白人に対して弱腰になってしまう男。などなど。

『クラッシュ』は、そうしたひとつひとつのエピソードに、ほとんど感情を挟まない。クールに、シビアに、一定の距離を置きつつ、エピソードを積み重ねていく。しかし、そうしたエピソードの繰り返しが、やがて大きなエネルギーを持ちはじめる。そのエネルギーが少しずつ解き放たれるとき、無関係に見えた様々な断片が、わずかずつではあるが絡まりはじめるのだ。見事な構成。しかも、その絡ませ方が、すごく自然で、全くいやらしくないのだ。

と、これだけ褒めておいてなんなんだけど、僕はそこまでこの映画が大好きなわけではない。少なくとも、2005年にアメリカで作られた全ての映画の中で、この映画が最も優れた作品だとは僕は思わない。スミマセンね、褒めたりけなしたり落ち着きがなくて(笑)。

うまく言えないんだけど、前半のエピソードの積み重ね方が、個人的にはあまり好きではなかったのだ。「差別」「差別」のオンパレードが、しつこいというかクドいというか。そりゃあリアルな実態を見せるというのはわかるけど、その時間を使って、もっと映画として何かを仕掛けることはできなかっただろうか?何かを訴えることはできなかっただろうか?要求が高すぎるかもしれないけれど、やっぱりアカデミー賞の作品賞を取るような映画には、僕はプラスアルファを求めてしまうのだ。

とはいえ、すごく誠実に、精巧に作られた良作だと思います。
暗い映画だし、辛くなるシーンも少なくないけれど、最後にはほのかな希望も見えてくる。そういう優しさや温かさが少しでも感じられたことが、僕には何よりもうれしかった。
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# by inotti-department | 2006-03-08 22:40 | cinema
『ミュンヘン』 ~悲しみの連鎖を断ち切ろう~
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満足度 ★★★★★★★☆☆☆ (7点)

『ミュンヘン』(2005、米)
   監督 スティーブン・スピルバーグ
   出演 エリック・バナ  ダニエル・クレイグ


1972年。ミュンヘン五輪の選手村で、イスラエル選手団の11名が虐殺される。犯行は、パレスチナのテロリスト集団”黒い九月”によるもの。イスラエル政府は、彼らへの報復を決断。イスラエル情報機関”モサド”は、即座に暗殺者チームを結成。犯行に関与した11名をリストアップし、彼ら全員の暗殺を命じる。チームのリーダーに抜擢されたのは、アヴナー。妊娠7ヶ月の妻との連絡も断ち切り、彼は任務を遂行しようとするが・・・。


巨匠スピルバーグ、渾身の力作。

僕は、個人的には”社会派スピルバーグ”より”娯楽派スピルバーグ”の方が好きなんだけど、そうはいってもこの映画はやはりスゴイ。面白いとか楽しいとか、そういう言葉を使う気にはなれないようなヘヴィーな作品なんだけれども、さすがにガツンと力作を完成させたなぁという印象。

重い。なんにせよ、重い。何がって、これは実際に30年ほど前に起こった出来事なのだ。決して、映画の中だけのフィクションではない。そして、9.11に象徴されるように、世界は今も当時と変わらない悲しみを背負いつづけている。スピルバーグは、30年前の事件を描くことで、同時に現在の状況の深刻さを改めて観客に提示してみせたのだ。

徹底的にリアリズムを追及した、緊迫感溢れる映像表現が圧巻。その暗殺シーンの残酷さは、目を背けたくなるほど。でも、背けちゃいけないのだ。この世界を覆っているひとつの確実な断片を、僕たちはきちんと受け止め、反省しなければならない。シビアな映像は、僕たちにそう語りかけてくる。

一方で、ただのドキュメンタリーにはなっていないところが、スピルバーグのスゴイところ。エンタテインメントもクソもないような悲劇を題材にしながらも、きちんと映画として、物語として成立させるそのテクニック。お得意の”お涙ちょうだい的ヒューマニズム”こそ今回は最小限に抑えているが、主人公5人の葛藤の物語には、十分な見ごたえがある。

そして同時に、サスペンス・スリラーとしての面白さもきちんと盛り込んでいるところが心憎い。誰が敵で誰が味方なのか、もう何も信じられなくなる疑心暗鬼の状況。そして、1人また1人と仲間も命を落としていく。相手を狙いながらも自分もまた狙われる、スリリングな戦い。ただただ残酷なリアリズム映画で2時間40分はちとキツイが、物語にしっかり起伏があるから、時間の長さを感じさせない。とりわけ、主人公が狂気スレスレのところまで追い詰められていく終盤の展開には、瞬きすら許されないような圧倒的な緊張感がある。

と、ここまで褒めちぎっておいて「じゃあ、なんで☆7つ止まりなのよ!?」ってツッコまれると、正直自分でも理由はよくわからない(笑)。ただ、なんだろう、グイグイと引き込まれながらも、心が激しく揺さぶられるというところまでは達しなかったのだ。頭でグルグル考えさせられはしたけれど、心の深いところまでは届かなかった、というか。うーん、うまく言えんけど・・・。

結局、本音を言えば、僕には理解できなかったのだ、彼ら5人の気持ちが。あるいは、アヴナーの想いが。イスラエルの国民が11人殺された。その悲しみ、やりきれなさまではわかる。でも、そのあと、よくわからないままに政府から報復の実行を命じられ、それを忠実に遂行していく気持ち。

いや、確かに葛藤していたよ。苦悩していたよ。でも、なんで彼じゃなくちゃいけなかったのか?「仕方ないんだ、国のためだから。」そういう理論がまかり通ってしまう宗教対立・民族対立の理不尽な側面を、説得力ある形で僕ら日本人に提示するところまでは、この映画は達せなかったという気がするのだ。

おそらく僕の考えでは、こんなもんじゃないんだと思う。ユダヤ人、あるいはパレスチナ人の国や宗教に対する想いって、この映画の主人公たち程度の表現・描写じゃ足りないんだと思う。たとえスピルバーグにユダヤの血が入ってようが、やっぱり、この映画は「アメリカで作られた中東映画」という枠を超えるまでには至らなかったんじゃないかなって。

ただ、逆に言えば、この映画がアメリカで作られたということに意味があるとも言える。「9.11」の悲劇。そこに繋がる背景の物語。あの日起きたことは、ただ、アメリカだけが被害者だったという単純なことではなかったのだ。

映画のラストシーン、カメラはNYの摩天楼を映し出す。
僕の頭の中に浮かんだのは、あの日、ビルに突っ込んでいった飛行機の映像・・・。

NYの情景をラストカットに持ってくるスピルバーグの勇気と意志。
悲しみの連鎖を断ち切ろう。そんな、無言のメッセージ。
やっぱり、スゴイ監督だなって、そう思った。
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# by inotti-department | 2006-02-22 02:04 | cinema
<ラ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 13:01 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<ル>

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# by inotti-department | 2006-02-21 13:00 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<レ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 13:00 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<リ>
・『リトル・ミス・サンシャイン』(2006、米)
   監督 ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファリス
   出演 グレッグ・キニア トニ・コレット
<Story>アリゾナで暮らす少女・オリーヴのもとに、少女のミスコン”リトル・ミス・サンシャイン”決勝戦の招待通知が届く。決勝戦に出場するため、家族揃って出発するが、家族内には問題が山積み。父親のリチャードは職がなく、怪しい成功理論の出版で一攫千金をもくろむが、母親のシェリルは不安いっぱい。オリーヴの兄・ドウェーンは、空軍士官学校入学までは口を開かないと宣言しており、家族に全く心を開かない。シェリルの兄・フランクは学者だが、ライバルとの競争に敗れて自殺未遂を起こし、シェリルに引き取られたばかり。祖父”グランパ”は、オリーヴのダンスの先生だが、ヘロイン中毒で過激な言動ばかりを繰り返す。そんな家族が、手押ししないと発進しない黄色いオンボロ車で、一路カリフォルニアを目指す。移動中も、リチャードは出版のことが気になって仕方がないが、担当者と連絡がとれないのが気掛かり。やっと繋がるが、出版は中止になったことを告げられる。リチャードは旅の中止を考えるが、オリーヴのために先へ進むことを決意する。そんな中、グランパが倒れてしまう。病院へ運び治療するが、亡くなってしまう。一家は、オリーヴを誰よりもかわいがっていたグランパのために、そしてミスコンを心待ちにしているオリーヴのために、グランパの遺体をトランクへ載せ出発する。途中、警官に停車させられピンチを迎えるが、グランパが購入したポルノ雑誌のおかげで危機を脱する。車はさらに進むが、突然ひょんなことから、ドウェーンが色盲であることが発覚。パイロットになるという夢が叶わぬことを知ったドウェーンは激しく動揺し絶叫する。しかし、家族の温かい励ましによって立ち直り、カリフォルニアを目指す。いよいよ会場に到着した一行。どうにか受付をくぐり抜け、いよいよ大会スタート。しかし、出場するライバルたちは、みんな豪華な衣装・派手なパフォーマンスを披露し、一家は圧倒される。リチャードとドウェーンは出場を辞めることを進言するが、オリーヴはステージへ。そして、グランパが振付けたエッチで下品なダンスを披露する。会場は呆然。主催者はリチャードにダンスを止めるよう命じるが、リチャードはステージで一緒になってダンスに加わる。会場の困惑も無視して、家族全員がステージに上がり揃ってダンスを披露し、大会は幕をおろす。一家は大きな充実感を胸に、再びオンボロ車を発進させる。
<ひとことreview>愛すべき家族の、愛すべき物語。みんなキャラクターはハチャメチャだし、家族を包む状況は相当深刻なんだけど、とにかく楽しい映画。全てのトラブルが、最後のステージに収斂されていく構成が素晴らしい。よくよく考えると、映画のエンディングを迎えても事態はなにひとつ好転してるわけじゃないんだけど、それでもこれだけの爽快感があるのは、この家族がその互いの愛情を再確認できたからこそなんだと思う。「諦めない人は、負け犬じゃない」グランパの優しい言葉が心に残る。
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# by inotti-department | 2006-02-21 13:00 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<ロ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:59 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<ワ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:59 | 映画ネタバレstory<ラ・ワ>
<マ>
※完全ネタバレでstoryを紹介しております。未見の方はご注意ください。

・魔女の宅急便(1989,日)  ★★★★★★★★★☆(9点)
     監督 宮崎駿
     声の出演 高山みなみ  佐久間レイ  戸田恵子
<story> 13歳の魔女キキは、一族の慣習に従って、親元をはなれ自立の旅に出る。相棒は、黒猫のジジ。人間が暮らす海辺の街で、キキは新しい生活をはじめる。最初は、誰からも相手にされないが、パン屋のおソノさんと出会い、彼女の家に住まわせてもらうことに。キキは、パン屋を拠点に、宅急便の仕事をスタートさせる。最初の依頼は、プレゼントの黒猫の人形を届けること。しかし、途中でカラスに襲われ、キキは人形を落としてしまう。ひとまず、ジジに人形役をやらせることで危機を回避。さらに、人形を拾って修理してくれた画学生のウルスラと親しくなる。そんなある日、キキのもとに、パーティーの招待状が届く。持ってきたのは、トンボという少年。彼は、キキが街に降り立った日からしつこく声をかけてくる少年で、キキは邪険な態度をとっていた。が、突然もらった招待状に、キキは喜びを隠せない。パーティーは6時から。その前に、ひとつ仕事を片付けねばならない。それは、おばあさんが焼いたパイを、孫娘に届けること。しかし、途中で豪雨に遭って約束の時間を過ぎてしまい、さらに受け取った娘の冷たい態度に落ち込み、キキは高熱を出してしまう。おソノさんの看病で回復したキキは、おソノさんからお届けものを頼まれる。言われたとおりに持っていくと、そこにいたのはトンボ。おソノさんが仕組んだのだ。トンボの自転車に乗って街を走り回るうちに、キキはトンボに好意を抱く。しかし、トンボが華やかな服を着た友人たちと親しげに話しているのを見て、キキはイライラしてひとりで家に帰ってしまう。家に戻ると、キキにはジジの声が聞こえなくなっていた。さらに、空も飛べない。魔法が使えなくなってしまったのだ。落ち込むキキのもとを、ウルスラが訪ねてくる。自分も絵が描けなくなることがあるという彼女の話を聞き、さらにパイ焼きのおばあさんから素敵なプレゼントをもらい、キキは元気を取り戻す。そんな彼女のもとに飛び込んできた衝撃のニュース。街に不時着していた飛行船が暴走し、トンボが飛行船ごと空に投げ出されてしまったのだ。キキはトンボを助けるため、ホウキにまたがり、空を飛ぶ。街の人たちが固唾を呑んで見守る中、キキはトンボを救出する。こうして、周囲ともすっかり打ち解け、キキは充実した毎日を過ごすのだった。
<ひとことreview> ジブリ作品の中で、僕が一番好きなのがこの映画。出てくるキャラクターが、みんな温かくて愛すべき人たちなのが良い。ジジ、おソノさん、その旦那、パイ焼きのおばあさん、そのお手伝いのおばあちゃん、ウルスラ。すごく元気になれる、楽しい映画だ。魔女が主人公という形をとってはいるが、これは「自分さがし」であり、「子供から大人になる」ことを描いた物語。キキが途中で遭遇するスランプには、誰しも身に覚えがあるだろう。他愛ないことが、世界の終わりぐらい重大なことに思えて悶々と悩む、それは13歳世代の特権のようなものだ。そこから抜け出させてくれるのは、周囲の人たちのやさしさや励まし。自分は自分、他人と比べる必要なんてないんだ、という気付き。そして何より、大切な人を想う気持ち。こういう普遍的なテーマを、シンプルで楽しいストーリーの中で表現していることが素晴らしい。そこが、声高にメッセージを主張することに重きを置きすぎている『ハウル』や『もののけ』などの後期ジブリ作品と、決定的に違うところだ。自分に子供が出来たら真っ先に見せてあげたい、そんな素敵な名作だ。

・マラソン(2005,韓)  ★★★★★★★☆☆☆(7点)
     監督 チョン・ユンチョル
     出演 チョ・スンウ  キム・ミスク  イ・ギヨン  パク・ソンヒョン
<story> チョウォンは、マラソンとシマウマとチョコパイが大好きな20歳。自閉症のため、他者とうまくコミュニケーションをとれないが、母親キョンスクの深い愛情に見守られ、心優しい青年に育った。10キロマラソンで3位に入ったチョウォン。取材にきたマラソン雑誌の記者は、彼のフルマラソン挑戦を母親に提案する。キョンスクは、チョウォンにコーチをつける。コーチのチョンウクは元ランナーだが、飲酒事故の罰として200時間生徒への指導を命じられていたため、チョウォンのコーチを無償で引き受ける。チョンウクは最初マジメにコーチしないが、次第にチョウォンと心を通わせはじめる。しかし、キョンスクは、言葉遣いが汚く酒びたりのチョンウクと息子が親しくなるのが気に入らない。キョンスクは、フルマラソン挑戦は時期尚早と反対するチョンウクをクビにして、チョウォンを大会に出場させる。しかし、チョウォンは、完走を果たせずにリタイアする。そんな中、弟のチュンウォンが補導される。キョンスクは責めるが、彼は「兄だけでなく自分のことも見てくれ」と反論する。チュンウォンは、キョンスクの別れた夫から「父さんと暮らそう」と言われ、心が不安定な状態だったのだ。疲れはてたキョンスクは、自分の体調の異変を感じていた。ある日、チョウォンが駅で迷子になる。ホームで発見するが、チョウォンはシマウマ柄のスカートをはいた女性の尻を触ったため、女性の恋人からボコボコに殴られていた。息子を抱き締める母。そんな彼女に、チョウォンは「昔、僕が迷子になったのは、お母さんが手を放したからだ」と何度も呟く。彼女はショックを受け、胃痛で気を失ってしまう。病院で目覚めた彼女は、もう二度と息子の手を放すまいと誓い、マラソンももうさせないことを決意する。しかし、大会当日、チョウォンはこっそりスタート会場へ向かう。チョウォンは、制止する母の手を振り切って走りはじめる。チョウォンは、懸命に走る。母と買物するスーパーを、迷子になった駅のホームを、そしてシマウマが走る草原を、彼は走る。沿道の人々とタッチを交わし、ついにチョウォンはゴールする。そこには、母と弟の姿が。肩を寄せ合う3人。「家に帰ろう。」3人は、笑顔で歩きはじめるのだった。
<ひとことreview> これは、障害や難病についての映画ではない。家族を描いた物語だ。母親の苦悩を実にしっかりと描いている点が素晴らしい。彼女は、決して聖人ではない。心に闇を抱えている。コーチとの口論などを見ていると、確かに彼のほうが正論を言っているようにも感じられる(例えば、「彼がいないと生きられないのは、あなたのほうだ」という言葉)。しかし、そんな彼女を、いったい誰が責められるだろう。「私の願いは、息子より1日長く生きること。」死ぬまで息子の面倒をみるという彼女の覚悟は、僕の胸に突き刺さってきた。でも、彼らには、やはり親離れ・子離れが必要なのだ。その手段は、マラソン。マラソンのレースシーンが、また素晴らしい。今までずっと母親の手を放せなかったチョウォンが、沿道の人に対して手を差し出す。この瞬間、彼はついに社会とコミュニケーションをとり、母親から自立することができたのだ。ラスト、3人は抱き合い、こう語り合う。「家に帰ろう。」そう、たとえ手を放そうと、僕らにはいつだって「家」が、そして「家族」が待っているのだ。直球勝負の、素晴らしい家族物語。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:53 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ミ>
・ミッション・インポッシブル(1996、米)  ★★★★★★★★☆☆(8点)
   監督 ブライアン・デ・パルマ
   出演 トム・クルーズ ジョン・ボイト ジャン・レノ
<story> スパイ組織IMFのリーダー・ジムの元に、当局から新たな作戦指令が届く。それは、東欧に潜入しているスパイたちの情報が書かれた”NOCリスト”を盗み出した裏切り者・ゴリツィンを捕らえること。ジムの元に集まったのは、イーサン・ハントをはじめとする精鋭メンバー。ゴリツィンの現れるパーティー会場に潜入するが、作戦は失敗。イーサン以外の全てのメンバー、そしてジムも殺されてしまう。ひとり生き残ったイーサンの元に、CIAのキトリッジが現れる。キトリッジは、IMFの中に裏切り者がいて、その人間がリストを武器商人のマックスに売り渡そうとしていたと告げる。今回の作戦は、その裏切り者をあぶり出す作戦だったのだ。キトリッジは、唯一の生存者イーサンを裏切り者と断定し捕らえようとするが、間一髪イーサンは脱出する。アジトに戻ると、そこには死んだと思っていたジムの妻・クレアの姿が。イーサンとクレアは、マックスと接触し、手に入れたリストはCIAの用意した偽物だと伝える。イーサンはマックスに取引をもちかけ、本物のリストと裏切り者の正体を交換しようと申し出る。クリーガーとルーサーを仲間に加え、CIA本部からリストを盗み出すことに成功するイーサン。いよいよ、TGVの中でマックスと取引することを約束する。その前夜、イーサンの前に死んだはずのジムが現れる。彼は、裏切り者の正体はキトリッジであると告げる。しかし、イーサンはその瞬間、全てを理解する。裏切り者はジム。全ては彼が企て、クレアとクリーガーはその仲間だったのだ、と。当日。イーサンがマックスと接触する裏で、クレアはジムと落ち合っていた。しかし、ジムがマスクを脱ぐと、そこにはイーサンの姿が。クレアをはめるため、変装していたのだ。そこに現れた本物のジムは、観念して真実を告げる。ジムはクリーガーのヘリで脱出しようとするが、イーサンの阻止によって爆死する。全てが終わり、イーサンはスパイを辞めることを決意し、飛行機に乗る。そこに届けられたテープ。当局から、新たな指令が届けられたのだった。
<ひとことreview> 一級品の娯楽超大作。面白い。もともとのTVシリーズ「スパイ大作戦」を知っていると色々不満も出るのかもしれないが、全く知らない僕にとってはただただ単純に純粋に楽しめた映画だった。ブライアン・デ・パルマの演出もスピード感があって、少しも退屈を感じさせない。トム・クルーズのヒーローっぷりもまさにハマリ役。極めてシンプルで何のメッセージ性もないが、アクション・エンタテインメントのお手本のような映画だと思う。

・M:I-2(2000、米)  ★★★★★☆☆☆☆☆(5点)
   監督 ジョン・ウー
   出演 トム・クルーズ サンディ・ニュートン
<story> IMFのイーサン・ハントは、次の作戦に向けて、女泥棒ナイアと接触するように命じられる。イーサンとナイアは、瞬く間に恋に落ちる。そんなイーサンに命じられた新たな指令。それは、かつての彼の同僚アンブローズの計画を探り、人類を壊滅に導くウィルス「キメラ」を回収すること。この「キメラ」を開発した博士が飛行機でアンブローズらによって殺され、キメラと特効薬の「ベレロフォン」を奪われてしまったのだ。ナイアは、アンブローズの元恋人。当局は、ナイアをアンブローズの元に潜入させることを命じ、イーサンとナイアも渋りつつも作戦のために了承する。最初は、復縁した恋人という設定でうまく立ち回るナイアだったが、やがてアンブローズはナイアがイーサンによって自分たちのもとに送りこまれたスパイであることに気付く。一方、イーサンも、ことの真相を知る。「キメラ」と「ベレロフォン」は、製薬会社の社長マクロイが、金儲けのために博士たちに開発させたものだった。博士は、それを安全な場所に移そうと持ち出したが、マクロイを脅して莫大な利益を得ようと企むアンブローズによって殺されてしまったのだ。しかし、博士は「キメラ」を自らの体に注入して運んでいたため、アンブローズはまだ「キメラ」を入手できていなかった。「キメラ」は、製薬会社の中に保管されている。イーサンは、「キメラ」をアンブローズより先に手に入れるために、製薬会社に侵入する。「キメラ」を次々に破壊するイーサン。しかし、あと注射器1本というところで、イーサンの企みを察知したアンブローズが現れる。アンブローズは銃を向け、注射器を自分のところへ運ぶようにナイアに命じる。しかし、彼女はそれを自分の腕に刺してしまう。20時間以内に「ベレロフォン」を注入しないと、彼女は死んでしまう。アンブローズは、人間兵器となったナイアを町に解き放つことを計画する。一方、ナイアを救いたいイーサンは、アンブローズの仲間に変装し、アンブローズを騙して「ベレロフォン」を奪取する。激しい銃撃戦とカーチェイスの末、アンブローズを倒すイーサン。彼はナイアに「ベレロフォン」を注入し、2人は結ばれるのだった。
<ひとことreview> 人気シリーズの第2弾。僕は第1作は好きな作品だったのだが、この第2作は残念ながら全く楽しめなかった。ジョン・ウーの色は出ているし、トム・クルーズの色も出ているのだが、両者のテイストと「M:I」の世界観が全然噛み合っていないのだ。第1作が持っていた、クールでシャープでスタイリッシュな部分は全くもって影を潜め、ただの大味なアクション映画になってしまった。トム・クルーズは確かにカッコイイのだが、ジョン・ウー得意のスローモーションと合体することで、なんだかただのプロモーション・ビデオのようになってしまい、僕はむしろ笑ってしまった。あまり見所のない凡作。

・ミリオンダラー・ベイビー(2004,米)  ★★★★★★★★☆☆(8点)     
    監督 クリント・イーストウッド
    出演 クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン
<story> 親友エディとともに、ボクシングジムを経営するトレーナー・フランキー。彼は離れて暮らす娘に毎日手紙を出していたが、手紙は娘のもとには届かず、いつも戻ってきてしまっていた。そんなある日、彼の前に、女ボクサー・マギーが現れる。教えを懇願する彼女を、フランキーは「女には教えない」と相手にしない。しかし、マギーの熱意に負け、彼女を教えることに。マギーもまた、彼と同じく家族の問題で心に闇を抱えていた。父とは死別、弟は刑務所、母親は激太りの有り様で生活保護を受けていた。フランキーの教えのもと力をつけ、連勝街道を突き進むマギー。お金も稼げるようになり、母親に家を買うことを思いつく。しかし、母親は喜んでくれない。「家より金をくれ。余計なことをするな」と言われ、マギーは傷つく。その後も連勝を続けるマギー。しかし、フランキーはマギーをタイトル戦に挑戦させようとしない。彼はかつて、エディの無謀なタイトル挑戦を止められず、その試合でエディを失明させてしまったことをずっと悔いていたのだった。しかし、マギーの熱意に押され、ついにフランキーもタイトル挑戦を決意。マギーは優勢に攻めるが、相手王者がゴングの後に出してきたパンチをまともに食らい、マットに倒れこんでしまう。意識不明の状態に陥るマギー。目が覚めたとき、彼女は全身マヒの重症を負っており、もうボクシングはできない体になってしまったことを知り絶望する。フランキーは、毎日病室に通い、彼女に寄り添いつづける。そんなある日、マギーの母親が見舞いに現れる。しかし、母親は娘に財産の譲渡を迫り、権利書に強引にサインさせようとする。家族からも見放されたマギーに追いうちをかけるように、体の状態はさらに悪化。ついに、片足を切断することに。絶望したマギーは、フランキーに願い出る。「私を殺して。悔いはない」と。苦悩するフランキー。しかし、舌を噛み切って自殺しようとしたマギーを前に、彼女の想いを理解したフランキーは決意を固める。夜の病室へ忍び込んだフランキーはマギーの呼吸器を外し、注射を打って彼女を安楽死させる。フランキーは姿を消す。エディはフランキーをずっと待ちつづけるが、彼は戻らない。しかし、そんな中、ひとりの青年がジムに戻ってくる。彼は、かつてジムに通っていた弱小ボクサー。仲間から弱虫扱いされて袋叩きにあって以来、ジムに姿を見せなくなっていたのだ。「誰だって1度は負けるって言ったろ?」笑顔を見せる青年の姿を、エディは優しく見つめるのだった。
<ひとことreview> アカデミー賞主要4部門制覇の話題作。評判にたがわぬ力作だ。悲劇的な物語は、観る者にシビアな問いを投げかける。ずっと勝ち続ける人生などありえず、必ず人はいつか負ける日がくる。そのとき、人はどうやって自分の人生に光を与えるのか?マギーとフランキーが選んだ道は、あまりにも悲しいものだ。しかし、それは、互いを痛いほどに理解しあった2人だけが選びえた道だったのかもしれない。ラストシーン、ジムに戻ってくる青年の姿に、小さいが確かな光を感じた。「負けたら、またやり直せばいい」そういう道も、あっていい。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:52 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<メ>
・メゾン・ド・ヒミコ(2005、日)  ★★★★★★★★☆☆(8点)
   監督 犬童一心
   出演 オダギリジョー 柴咲コウ 田中泯
<story> 塗装会社で働く沙織のもとを訪れた男・春彦。彼は、ゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」の経営者である卑弥呼の恋人。そして卑弥呼は、沙織の父親。しかし、母親と沙織を捨ててゲイ・バーをはじめて以来、絶縁していた。春彦は、1日3万で「メゾン」でバイトしないかと沙織にもちかける。死んだ母親の入院費を捻出するために多額の借金を背負った沙織は、金に目がくらんで「メゾン」へ。しかし、卑弥呼は末期ガンで、余命あとわずかとなっていた。沙織は最初、ゲイを毛嫌いするが、次第に住人たちと打ち解けていく。そんな中、住人の1人ルビイが倒れる。「メゾン」では面倒を見切れないため、住人たちは悩む。一方、沙織は、父である卑弥呼を許せずにいた。沙織は、「メゾン」内に飾られた母親の写真を発見する。そこに写っている母は、40歳。母は、27歳で別れて以来、卑弥呼とは会っていないはず。なのに、なぜ写真が?沙織は、住人たちとクラブへ出掛け、踊りあかす。そこで、春彦は沙織にキスをする。惹かれあう2人は、「メゾン」でセックスを試みる。しかし、できない。春彦には、女性をどうやって抱いていいのかがわからないのだった。卑弥呼は、沙織に告白する。母の40歳の誕生日に、会ってプレゼントをあげた、と。沙織は思い出す。母が死ぬ前、ボケて自分のことを「卑弥呼」と呼んでいたことを。卑弥呼は、沙織に「あなたが好きよ」と告げる。時は流れ、お盆。ルビイは、結局息子家族に引き取られる。しかし、ゲイであることを隠して引き渡した住人たちへ、沙織は怒りを爆発させる。「ただ怖くて押し付けただけ。ゲイのエゴ。息子さんがこれからどれだけ苦しむと思ってるのよ!」沙織は、「メゾン」を出て行く。その後、卑弥呼は息をひきとる。沙織は、卑弥呼の荷物を全て預かり、「メゾン」をあとにする。塗装の仕事に戻る。沙織。そこに届いた知らせ。あるイタズラ書きが発見されたため、それを塗装することになったのだ。イタズラ書きの写真を見た沙織は、現場へ行く。そこは「メゾン・ド・ヒミコ」。春彦ら住人たちは、笑顔で彼女を迎え入れる。壁には、「沙織に会いたい!」と書かれていた。
<ひとことreview> 『ジョゼと虎と魚たち』の犬童監督による、新たな傑作の誕生。ゲイに対する差別、ノーマルとゲイの間に存在する壁という問題を真っ向から受け止めたうえで、温かい視線を注いでいる。春彦が、そして住人たちがゲイでなければ、沙織はもっと素直にスンナリと彼らと心を通わせることができたはずだ。そして、父である卑弥呼とも。表面的には、沙織は父のことを許せないまま永遠の別れを迎える。しかし、ラストシーン、沙織は再び「メゾン」を訪れた。彼女は、住人たちにもう1度会いたい、と素直に願ったから。その沙織の心の中に、おそらく父親に対するわだかまりはなかったはずだ。沙織の感情の変化は、そのまま僕たち観客、ひいては社会一般の人たちの視点と重なる。これはとても難しい問題だけれど、きっと乗り越えることもできるはず。映画は、そう優しく語りかける。沙織というキャラクターを表情豊かに演じきった柴咲コウは、キャリア最高の演技。そして田中泯の存在感は、圧巻のひとこと。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:48 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ム>
・麦の穂をゆらす風(2006、英・愛・仏) ★★★★★★★★☆☆(8点)
   監督 ケン・ローチ
   出演 キリアン・マーフィー ポーリック・デラニー
<Story>1920年、アイルランド。長きにわたるイギリスの支配で、アイルランドの人々は苦しんでいた。デミアンは医者を志しロンドンへ行くことが決まっていたが、友人のミホールがイギリス警察によって殺されてしまいショックを受ける。それでもロンドン行きの列車に乗り込もうとするデミアンだが、列車の運転士がイギリス軍の乗車を拒否し勇敢に戦っているのを目撃し、アイルランドに残りイギリスとの戦いに参加する決意を固める。デミアンら仲間たちは、デミアンの兄・テディをリーダーにイギリスに反旗を翻す。しかし、すぐにアジトがばれ、イギリス警察によって幽閉されてしまう。テディは指の爪を剥がされるなど瀕死の重傷を負うが、警察内のアイルランド人の助けでなんとか脱出する。脱出後、デミアンは裏切り者が仲間のクリスであることを突き止め、自らクリスに銃を向け処刑する。戦いはさらに激化し、何よりもイギリスとの戦いを優先するテディらはあくどい武器商人らを重用したため、アイルランドの貧しい人たちにとって必ずしも味方ではない場面も出てくる。しかし、テディらの奮闘が実り、ついにアイルランドとイギリスは停戦に合意する。晴れて自由を勝ち取ったデミアンは、想いを寄せるシネードと結ばれる。しかし、掴み取ったかに見えた自由は、まやかしでしかなかった。条約の内容は、「アイルランドの自由は、あくまでもイギリス内の自治領としてのみ承認される」というものだったのだ。デミアンらは、再び立ち上がろうと決意する。しかし、その前に立ちはだかったのは、テディだった。テディは、一定の条件があるとはいえ、掴み取った自由を勝利への確実な第1歩として捉えており、これ以上の内戦はアイルランドにとってプラスにはならないと考えていた。条約を結んだアイルランド政府を支持するテディは、アイルランド新自由国軍としてデミアンらの蜂起を止めさせようとする。しかし、降伏を迫るテディの要求を、デミアンは断固拒否する。テディは、涙を流しながら、デミアンを処刑する。デミアンの死を告げるテディに対し、シネードは「二度と来るな」と泣き叫び、追い返すのだった。
<ひとことreview>カンヌ映画祭パルムドール受賞作。ズッシリと見応えのある、見事な映画である。内戦という悲しい現実の前に、引き裂かれていく兄弟の絆。2人とも決して間違っていないのに、悲劇的な結末を迎えてしまうことに、ただただ虚しさだけが残る。ひとつだけ言える確かなことは、暴力は暴力しか呼ばない、ということだ。どちらの言い分も正しかったとしても、あるいは明らかにどちらか片方が正しかったとしても、やはり私たちは武器を手にしてはいけないのだ。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:48 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<モ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:47 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ヤ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:46 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ユ>
・雪に願うこと(2006、日) ★★★★★★★☆☆☆(7点)
   監督 根岸吉太郎
   出演 伊勢谷友介 佐藤浩市 小泉今日子 吹石一恵
<story>北海道・帯広のばんえい競馬場。学は、なけなしの全財産をウンリュウという馬に注ぎ込むが、あえなく敗退。無一文になった学は、調教師をしている兄の威夫を訪ねる。しかし、13年ぶりの再会にも、東京で会社を興すために母親を自分に任せて出て行った弟に対して、威夫は冷たく応じる。学は母親の居場所を尋ねるが、威夫は「施設に入っている」というだけで場所を教えようとはしない。威夫は、寝泊りをさせる条件として、学に厩舎の仕事を手伝わせる。ある夜、学の友人・須藤からの電話を威夫は受ける。切迫した声で学の居場所を聞いてくる須藤の様子にただならぬものを感じとった威夫が学を問い詰めると、学は、事業に失敗して会社が倒産し、さらに離婚したことを告白する。威夫は「お前にやる金はない」と冷たくあしらいながらも、引き続き厩舎で働くように命令する。最初は軽い気持ちで嫌々働いていた学だったが、晴子ら厩舎の人々のやさしさや威夫の情熱に触れ、次第に居心地の良さを感じはじめる。ある日、威夫は母親の暮らす介護施設に学を連れていく。学は母親に声をかけるが、重度の痴呆を抱える母親は息子と認識できず、学は落ち込む。厩舎での仕事に精を出す学が初めて担当することになった馬がウンリュウ。ウンリュウは敗戦続きで、次のレースでも勝てないと馬肉になってしまう運命にあった。そんなウンリュウに自身を重ね合わせながら、学は精一杯の愛情でウンリュウの世話をする。学の献身的な働きぶりを意気に感じた威夫は、ウンリュウをレースに出走させることを決める。ウンリュウに騎乗するのは牧恵。伝説的な名ジョッキーを父に持つ彼女もまた、学やウンリュウと同じく悩んでいた。父親は蒸発し、自身はめっきりレースに勝てない。騎手を辞めようかと思い悩むが、ウンリュウに賭ける学の熱意に心打たれ、最後の勝負に打って出る。レース前夜、威夫は学に、北海道に戸籍を移すように進言する。しかし学は、「明日、東京へ戻る」と伝える。レース当日。最後の坂を駆け上がり、先頭でゴールへと突き進むウンリュウ。そんなウンリュウのレース結果を見届けることなく、学は1人、北海道を後にするのだった。
<ひとことreview>極めて誠実に作られた感動作。北海道の大自然と馬たちの息遣いが伝わってくる美しい映像の中で、不器用にも精一杯生きようとする登場人物たちの生き様に心揺さぶられる。登場する誰も、完璧な人間ではないし、各々の悩みや傷を抱えている。それでも彼らは、必死に歯を食いしばって立ち上がり、まっすぐに歩こうとする。そんな彼らを象徴するようなウンリュウのラストレースは、とても感動的だ。しかもこの映画が素晴らしいのが、その感動を決して押し付けようとしないところ。結局、ウンリュウが勝ったのかどうかも映画の中では明らかにならないが、それでいいのだ。人生はわかりやすいハッピーエンドで終わるような単純なものではないし、レースは、これからも続くのだから。威夫を演じた佐藤浩市が出色の演技。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:46 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ヨ>
・容疑者 室井慎次(2005,日)  ★★★★☆☆☆☆☆☆(4点)
     監督 君塚良一
     出演 柳葉敏郎  田中麗奈  哀川翔  八嶋智人  筧利夫
<story>警視正・室井の逮捕。ことの発端は、黒木という青年が刺殺された事件。容疑者として浮上したのは、交番の警官・神村。執拗な取調べに耐えかね、神村は逃走。車にはねられ、即死する。現職警官が起した不祥事は、警視庁の失点。警視庁副総監と熾烈な権力闘争を繰り広げていた警察庁次長は、トップを獲るチャンスと喜ぶ。事件は被疑者死亡として処理されるが、神村と黒木が同じ栞を持っていたことに興味を示し、室井は捜査を続行。警察庁幹部は、これを心よく思わない。室井のライバル・新城も室井を説得しようとするが、真実を求める室井はとりあわない。そんな中、室井が逮捕される。容疑は、取調べ中の暴行・脅迫を容認したこと。告訴したのは、神村の母親だ。室井の弁護には新人の久美子がつき、一方、相手の弁護にはエリート弁護士の灰島が。告訴は、母親ではなく灰島主導で準備されたものだった。室井を慕う沖田の根回しで、室井は釈放される。室井は停職を言い渡されるが、新宿北署を拠点に捜査再開。次第に見えてくる真相。神村と黒木は、杏子という女性をとりあっていた。一方、杏子の借金は帳消しになっていた。しかし、捜査には執拗なジャマが入る。室井は謎の男に暴行され、灰島からは、捜査から手を引くように圧力をかけられる。また久美子も、灰島から弁護士を辞めるように脅される。さらに、警察内で怪文書が出回る。それは、室井が大学時代に、女を振り回して死なせたというものだった。混乱の責任をとる形で、室井は辞職を迫られる。そんな室井に、灰島は取引を持ちかける。捜査から手をひけば、告訴を取り下げるというものだ。しかし、久美子はそれを阻止。そんな久美子に、室井は過去を告白する。室井の彼女は、不治の病にかかった。室井は看病をするために、大学を辞める決意を固めた。それを知った彼女は、自殺したのだった。室井は再び捜査をはじめ、杏子を聴取する。そこに現れる新城。彼は、事件の真相を語る。杏子は、知人に黒木殺害を依頼。神村は、覚せい剤を横流ししてくれたり、借金を帳消しにしてくれたり、都合のいい男だったからだ。神村は、杏子の関与を知りながら、彼女をかばって黙秘した。そして、杏子は父親に頼み、灰島を雇った。大金を積まれ、灰島は真相をもみ消そうとしたのだ。そのために、真相に迫ろうとする室井をジャマするため、告訴を画策し、室井を脅迫したのだった。全てが明らかになり、真犯人は逮捕。室井への告訴も取り下げられる。新城は、室井に広島への異動を命じる。「警察には、あなたが必要だ」室井の新たな戦いがはじまった。
<ひとことreview> ”踊る”シリーズ史上最低の凡作。室井の罪や事件の内容に何の魅力もないのが、最大の問題だろう。物語は、大風呂敷を広げつつどんどん進んでいくが、観ているこちらの気持ちは全然乗っていかない。そして、明らかになる真相。これがまたヒドイ。結局、弁護士の陰謀や警察トップの権力闘争も、それぞれの説明はあるので納得はするが、殺人事件とは少しも繋がらない。小さな事件に振り回される(あるいは、それを利用する)警察組織や法の実態を描くことで、それらと戦う室井の虚しさと熱い思いを鮮明にするいう狙いはわかるのだが、あれだけ伏線を張っておいて、これはちょっとヒドすぎやしないか。カタルシスも盛り上がりも、そこには全くない。俳優陣は健闘しているだけに、脚本の粗さが余計に残念。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:45 | 映画ネタバレstory<マ・ヤ>
<ナ>
※完全ネタバレでstoryを紹介しております。未見の方はご注意ください。

・『NANA』(2005、日)   ★★★★★☆☆☆☆☆
     監督 大谷健太郎
     出演 中島美嘉  宮崎あおい  松田龍平
<story> 彼氏と一緒になるために東京へ向かう小松奈々。ボーカリストとして成功するために東京へ向かう大崎ナナ。2人は、同じ新幹線に乗り合わせ、意気投合する。東京に到着後、2人は別れ、奈々はさっそく彼氏・章司のもとへ。しかし、章司は奈々と同居するつもりはなく、奈々は家探しを開始。良い物件を見つけるが、そこにいたのはナナ。彼女も新居を探していたのだ。2人は、一緒にその部屋で暮らすことに。おっとりした奈々と男勝りのナナは、性格こそ全く違うが妙に気があい、どんどん親しくなっていく。ナナは、東京で新たなメンバーも加え、バンド活動をスタートさせる。しかし、奈々は、バイトばかりしている章司とあまり会えず、不満を募らせる。ある日、ナナと2人で章司のバイト先を訪問するが、そこで章司がバイト先の女性と浮気していたことを知ってしまう。落ちこんで号泣する奈々を、ナナはやさしく慰める。失恋の傷がなかなか癒えない奈々だが、そこにうれしい知らせが。大好きなバンド「トラネス」のライブのチケットをゲットしたのだ。さっそくナナを誘うが、あまり気乗りしないようだ。奈々は、その理由をバンドのメンバーから聞く。ナナは、「トラネス」のギタリスト・レンとかつて一緒にバンドを組んでいて、しかも2人は付き合っていたのだそうだ。しかし、レンは東京へ進出することになり、それで2人は別れたのだという。それを聞いた奈々は、ナナをレンと会わせたいと考え、さらに必死に誘う。ナナは、渋々承知する。ライブ当日。最前列でレンの姿を見たナナは、涙を流す。そんなナナの手を、奈々はやさしく握る。ライブが終わり、ナナはレンに会いに行く。レンの首にいまもかけられたネックレスの鍵を渡し、別れを告げるために。しかし、再会した2人は、自分たちの本当の想いに気付き、2人は再び結ばれる。そして奈々も、新しくはじめた出版社の仕事に悪戦苦闘しながら、ナナと暮らす家を拠点に、前向きな生活をはじめるのだった。
<ひとことreview> 大ヒット少女マンガの映画化。原作を読んでいない僕にとっては、不完全燃焼の映画だった。映画が終わったあとの劇場の雰囲気から察するに、この映画を本当に楽しむには、「漫画を読んでいる人がツッコミをいれて楽しむ」という形がベストのようだ。1本の映画としては、未熟な点が多数。学芸会並みの稚拙な会話シーンも前半は少なくないし、ストーリーの展開も甘い。唯一の見せ場は、「トラネス」のライブシーン。そこで歌われる『ENDLESS STORY』は名曲だし、中島の芝居もグッド。2人が手を握るシーンも素晴らしいのだけれど、そこが予告編で散々流されていたために予想できてしまったのは、とても残念だった。
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:43 | 映画ネタバレstory<ナ・ハ>
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# by inotti-department | 2006-02-21 12:42 | 映画ネタバレstory<ナ・ハ>
<ヌ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:42 | 映画ネタバレstory<ナ・ハ>
<ネ>

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# by inotti-department | 2006-02-21 12:42 | 映画ネタバレstory<ナ・ハ>
   
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
by inotti-department
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