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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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『ブロークバック・マウンテン』 ~驚くほどシンプルな、素晴らしきラブストーリー~
満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8点)
『ブロークバック・マウンテン』(2005、米) 監督 アン・リー 出演 ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール 1963年、ブロークバック・マウンテン。山でテントを張りつつ羊の世話をする仕事に従事することになったジャックは、そこでイニスという男と出会う。寡黙なイニスと、無邪気なジャック。最初はウマが合わない2人だが、過酷な環境で共に過ごすうち、次第に友情が芽生えはじめる。そして、凍えるほど寒い夜、2人はテントの中で愛を交わす。しかし、互いへの熱い想いを胸に抱えたまま、冬の訪れとともに2人は山を下りる。その後、互いに結婚し家庭を持つが、あの夏のブロークバック・マウンテンでのときめきは、2人の中で消えることはなかった・・・。 今年度のアカデミー賞。作品賞の大本命と言われながら、『クラッシュ』に賞をさらわれてしまった問題作『ブロークバック・マウンテン』。 この映画の何が”問題作”なのかというと、そのテーマ。少し雑な言い方をするけれど、要は「ホモ映画」なのだ。男と男の、禁断の愛。一説によると、保守的なアカデミー会員にとって「同性愛」は受け入れがたいテーマであり、そのあたりが原因で作品賞を逃したのでは、という見方もある。 で、僕の感想。いったい、この映画のどぉーーーこが”問題作”なのさ!全然、何の問題もないよ。何にも過激じゃない。教育に悪いなんてことも全くないし、別に衝撃的なシーンがガンガン続くような映画でもない。もしもこの映画が”問題作”だとみなされたのならば、僕にはアカデミー会員という人たちが全く理解できない。 これは、ラブストーリーだ。驚くほどシンプルで、驚くほどピュアで、そして驚くほど切ない、とっても魅力的なラブストーリーなのだ。この映画の中で描かれる全ての感情が、僕には手にとるように理解できたし、心から共感できた。とても素晴らしい映画だと思う。 「同性愛」というものがなぜ存在するのか、僕にはよくわからない。僕は同性の誰かに対して、女性を好きになるのと同じような感情を抱いたことは1度もないし、おそらく今後もないと思う。でも、この映画を観て、わかったことがある。それは、異性を好きになるのも、同性を好きになるのも、きっかけは同じようなものだろうということ。 たまたま、なんだろうと思う。気が付いたら、自分は同性に対してドキドキを感じる人間になっていた。あるいは、そういう人間なんだと気付いた。それだけのことなんだろうと思う。映画の中のジャックとイニスも同じ。気が付いたら、相手を好きになっていた。気が付いたら、抱き合っていた。「男&男」だろうが「男&女」だろうが、恋愛の始まり方にはなんら変わりがない。 そんな2人を、ブロークバック・マウンテンの雄大な景色が、やさしくやさしく包み込む。美しい。もう何も言葉の必要がないぐらい、ただただ美しい。ホント、いいタイトルだよなぁ。2人の美しい愛の象徴、それがあの美しい景色なのだ。 しかし、一方で、世間は山のようにやさしく2人の愛を受け入れてはくれない。「同性愛」に対する、圧倒的な偏見。嫌悪感。特に、1960年代・70年代というこの映画の時代は、今以上にその風潮は強かっただろう。 そして、愛を素直に受け入れられないのは、何も世間だけじゃない。当の本人たち、ジャックとイニスも同じ。2人も、自分の中に存在する”許されない感情”に戸惑い、悩み、葛藤する。「男&男」と「男&女」の恋愛の唯一にして最大の違いは、その点だろう。愛する2人が、その想いを貫くことさえ、困難になってしまうのだ。 また、苦しむのは何も本人たちだけじゃない。周囲の近しい人たち。彼らもまた、それぞれに葛藤する。イニスの妻。ジャックの妻。イニスの娘。ジャックの両親。スタンスはそれぞれに違うが、彼らもまた葛藤と戦い、思い悩む。 イニスのキャラクターがすごく良い。物静かでクールな男。一見、「ジャックはイニスが大好きだけど、イニスは果たして?」と疑いそうになるほど、彼は気持ちをなかなか表に出さない。その彼が、ジャックと山で別れたあと、激しく号泣する。このシーンの、なんと美しく切ないことか。この瞬間、イニスがどれだけジャックを愛しているかということがはじめて映画の中で明らかになる。 中盤の複雑な感情の揺れにも、そのあまりの切なさに激しく心揺さぶられる。妻との離婚。それでも、彼はジャックのもとに飛び込むことができない。世間と自分とのバランス、娘の存在、そして幼い日に目撃した、同性愛者の殺害現場・・・。 2人の愛に、ハッピーエンディングは訪れるのか?映画の後半には、誰もが願うようになるだろう、2人の幸せを。観客をそういう気持ちにすることが出来た時点で、この映画が「傑作」になることは約束された。 今年のアカデミー賞。『クラッシュ』もたしかに良い映画だ。作品の完成度だけ取るならば、確かに『クラッシュ』に分があるだろう。 でも、個人的な思いを言うならば。『ブロークバック・マウンテン』に、切なくも美しい2人の男性の愛の物語に、それは与えられるべきだったと僕は思っている。 <以下、終盤のネタバレ含みます。未見の方、これから観られる方はご注意ください。> しかし、2人の幸せを祈りつつも、僕は心のどこかで覚悟していた。2人の愛に、切ない結末が待っているのであろうことを。そして、あっけなく、前触れもないままに訪れる悲劇。悲しんだり、泣いたりする時間さえ与えられない。あまりにも突然の悲劇。 理由はまだいいのだ。そこまでは、まだ。問題は、それが発覚するに至った、その相手。それが、”ジャックとイニス”ではなかったということ。その事実が、もう感情のやり場がないほどに、あまりにも切ない。 そして、ラストシーン。 うまく言えないけれど、これはこれでハッピーエンドなのかもしれないなって、僕はそんな風に感じた。あの瞬間、やっと2人は、全ての制約から解放されて一緒になれたのだから。
by inotti-department
| 2006-03-15 23:49
| cinema
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映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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