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当ブログでは、「あの映画(小説)、一度観たんだけど、どういう話だったかが思い出せない・・・」とお困りの方のために、映画(小説)のストーリーを完全に網羅したデータベースを公開しております。詳しくは、カテゴリ内の「映画(小説)ネタバレstory紹介」をご参照ください。なお、完全ネタバレとなっていますので、未見の方はくれぐれもご注意ください。
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> 『博士の愛した数式』~こんな授業があったらいいな~
『博士の愛した数式』~こんな授業があったらいいな~_e0038935_11545276.jpg満足度 ★★★★★★☆☆☆☆(6点)

『博士の愛した数式』(2006、日)
   監督 小泉堯史
   出演 寺尾聰  深津絵里  吉岡秀隆


数学教師のルート先生は、新学期最初の授業で自己紹介をする。そこで語られたのは、自分と数学との出会い、彼が「ルート」と呼ばれるようになった理由、そして彼が”博士”と一緒に過ごした日々について・・・。ルートが10歳のとき、母親が家政婦として”博士”の家に通うようになった。博士は、事故の後遺症で、記憶が80分しかもたなかった。ある日、家政婦に10歳の息子がいることを知った博士は、息子も一緒に家に連れてくるように彼女に命じる・・・。


小川洋子のベストセラー小説の映画化。

なかなか良く出来ているのではないだろうか。決して派手さのあるストーリーではないし、同時期公開の『THE有頂天ホテル』と比べると、いかにも話題性に欠ける。でも、地味ながらもロングヒットを続けているのは、この映画がもっているやさしい雰囲気に多くの人が共感したということなんだと思う。それは、原作に関しても全く同じだろう。

ひょっとすると、原作を未読の方の中には、大ベストセラーの映画化ということで大きな期待とともに劇場へ足を運んだ人も多かったかもしれない。そして、「あれ?ずいぶん地味な話だな。原作とは違うのかな?」などと感じたかもしれない。でも、ご安心ください(笑)。原作もこんな感じです。無理に盛り上げず、感動を押し付けようともしない、そういうナチュラルな物語なのだ。

『博士の愛した数式』の最大の魅力は、数学というとっつきにくい題材を扱いながら、立派なエンタテインメントとして成立しているところだと思う。ルート先生の授業、博士の授業。キャラクターたちの数学・数字への愛情が画面いっぱいに溢れていて、それがそのまま観ているこちらにまで伝わってくる。それが、何よりも素晴らしい。

これは、「数学(算数)なんて嫌い!」と思っている子供たちにこそ観てほしい映画かもしれない。僕も決して子供の頃、数学を好きだった人間ではないけれど、この映画の中で語られる数学や数字の話は、もっとずっと聞いてみたいと思った。「子供の頃、こういう授業を受けていれば、いまごろきっと・・・」というのは、ただの言い訳(笑)。

僕が原作を読んで感じた魅力も、これと全く同じだった。そういう意味では、小泉監督が感じたことも同じだったのだろう。数学・数字の魅力をしっかりと映画を通じて伝える。そのことを念頭に作品を作り上げたということが、映画を観ているとよくわかる。例えば、大人になったルート先生の授業を軸に物語を進行させる手法などは、その象徴。これは原作にはない映画オリジナルのシーンだが、結果的には大成功だったと思う。

一方で、僕が原作の中で好きだったシーンがいくつか省略されていたのは少し残念だった。特に、物語の中盤から終盤にかけて、物語を盛り上げる工夫がこの映画には欠けている。映画全体に一貫している”やさしい空気感”が魅力とはいえ、もっと心揺さぶられるような印象的なシーンやエピソードがあってもよかったのかな、と思わなくもない。

俳優陣の中では、大人になったルートを演じた吉岡秀隆が、短い出番ながらも好演。寺尾聰もさすがに上手いが、僕がイメージしていた”博士”像とは少し違った。
by inotti-department | 2006-03-18 12:15 | cinema
映画・小説・音楽との感動の出会いを、ネタバレも交えつつ、あれこれ綴っていきます。モットーは「けなすより褒めよう」。また、ストーリーをバッチリ復習できる「ネタバレstory紹介」も公開しています。
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